2019年1月22日火曜日

【harappa Tsu-shin】harappa映画館(3/9開催) 前日準備・当日運営ボランティアスタッフ募集


「弘前のまちなかに映画館を!」と、
harappaが行っている上映会「harappa映画館」。
次回は、3月9日(土)にスペース・デネガにて開催されます。

この上映会を一緒につくってくれるボランティアスタッフを募集しております。

◯前日準備 3/8(金) 15:00〜17:00頃
作業内容:スクリーン設置、客席・受付設営など
・交通費や謝礼はございませんので、ご了承ください

◯当日運営 3/9(土) 09:00〜20:00頃
作業内容:受付、会場案内など
・お弁当をご用意しております
・希望する上映作品をご覧いただけます
・交通費や謝礼はございませんので、ご了承ください

暗闇の中、物語が映し出される場をつくる面白さがあります。

少しでも興味のある方は、ぜひ事務局までご連絡くださいませ。
メール場合、件名に「harappa映画館 ボランティアスタッフ希望」と明記の上、
お手伝いいただける日にちをお知らせください。
ぜひお待ちしております!!

問合:harappa事務局
   tel: 0172-31-0195(平日 9時〜17時半) e-mail: post@harappa-h.org

☆上映会の詳しい情報はこちら



2019年1月21日月曜日

【越境するサル】№.184「珈琲放浪記~青森県の珈琲を歩く(その3)~」(2019.1.18発行)


 「珈琲放浪記~青森県の珈琲を歩く(その3)~」をお届けする。11月から1月までに味わった青森県の珈琲の報告である。今回は、弘前市・八戸市・青森市の3店。八戸市の店は初めての訪問だが、弘前市と青森市の店は通い慣れた店。
すべて、自信をもってお薦めできる珈琲

 
「珈琲放浪記~青森県の珈琲を歩く(その3)~」


11月某日 弘前市銅屋町 「ゆぱんき」

   五重塔で有名な最勝院の隣、消防屯所と上質フランスワインが格安で飲める店「わいんぱぶ  ためのぶ」の間にある路地の奥に「ゆぱんき」はある。


   もう何代目かの「ゆぱんき」だが、現在の店になってからはランチのために来店することが多くなった。おそらく20種類以上の野菜を中心とした素朴な和食だが、ご飯と味噌汁とともにゆっくり噛みしめると、自分の生命力が蘇ってくるような気がしてくるから不思議だ。


   そして食後の珈琲は、石川県珠洲(すず)・木の浦海岸の舟小屋に2001年開店した「二三味(にざみ)珈琲焙煎所」の人気№1ブレンド「二三味ブレンド」。ブラジル・パプアニューギニア・タンザニアを深煎りで焙煎した苦味がきいたブレンドだが、「華やかな」とでも表現したくなる香りと味わいは格別である。3gの角砂糖をひとつだけ落とし、気に入った本でも読みながらいつまでも長居したくなる店だが、混みあったらそうもいかない…





12月某日 八戸市小中野 「アンバーコーヒー」

   八戸駅から鮫・久慈方面へ向かうJR八戸線。その小中野駅から陸奥湊駅に向かう道を数分ほど歩くと、「アンバーコーヒー」にたどり着く。


   店に入るとすぐカウンター。いくつかのテーブル席はあるが、狭く感じる。ところが、入って左奥に焙煎室と思われる空間があり、そこにもテーブル席がいくつか。この部屋が、なんとも居心地のいい雰囲気なのだ。シンプルでモダン…ちょっと形容しがたいが。
   クリームソースとタラコのパスタとエスプレッソを注文する。どちらも想像以上の美味しさ。パスタのバランスの良さと、エスプレッソの口当たりの良さに感服。今回はエスプレッソにしたが、日替わりで3種類用意された豆から選べるストレートコーヒーも魅力的だ。



   なるほど、市街地からわざわざここを目指してみんなが来るわけだ。もう一度来る価値あり。今度来るときは、評判のカレーライスとストレートコーヒー。



1月某日 青森市古川「カフェ・デ・ジターヌ 駅前本店」

   青森市古川ニコニコ通り。「昭和」を感じさせるこの通りに、「カフェ・デ・ジターヌ」はある。東京南千住駅近く、「コーヒーの聖地」のひとつ「Café Bach(バッハコーヒー)」で修行した焙煎士による自家焙煎珈琲豆販売店だが、この駅前本店はバール風(チェアはある)の喫茶で、珈琲好きにはたまらない店である。しかも青森駅に近い…



   実は、私が自家焙煎深煎りの珈琲を意識して飲むようになったのは、ペルー・マンデリン・マラウイ・ブラジルを調合したこの店の主力商品「青森ブレンド」と出会ってからだ。
それまでも深煎りは好きだったが、「青森ブレンド」の芳醇な味わいと心地よい苦味との出会いは、その後の「珈琲放浪」のスタートであった。


   今回は、少し冒険のつもりで「天空のコロンビア」(かなり深煎り)のエスプレッソ・アメリカーノを試しに飲んでみた。エスプレッソのお湯割りだが、侮るなかれ、これがなかなかのものなのだ。苦味もあって、すっきりと。また味わうべきメニューだ。


   帰りに、豆も購入。もちろん「青森ブレンド」、そしてこの日味わった「天空のコロンビア」。しばらく、我が家の珈琲は「カフェ・デ・ジターヌ」で決まり。




<後記>

   「青森県の珈琲を歩く」シリーズは、しばらく中断する。と言っても、何カ月かすればまた紹介したい店が出てくるはずだ…次号は、3月の「harappa映画館」の紹介、『ドキュメンタリー最前線 2019』。





(harappaメンバーズ=成田清文)
※「越境するサル」はharappaメンバーズの成田清文さんが発行しており、
個人通信として定期的に配信されております。



2019年1月7日月曜日

【越境するサル】№.183「今年出会ったドキュメンタリー 2018年10-12月期」(2018.12.31発行)

2018年10-12月期に出会ったドキュメンタリーについて報告する。
               
    「今年出会ったドキュメンタリー 2018年10-12月期」   
 2018年10月から12月までに観たドキュメンタリーを列挙する。スクリーンで観た映画は4本、あとはDVD等での鑑賞。( )内は製作年と監督名と鑑賞場所等、※はテレビ・ドキュメンタリー。 

10月・・・『ハロルドとリリアン ハリウッド・ラブストーリー』(2015  ダニエル・レイム)     
      『チャルカ~未来を紡ぐ糸車~』(2016  島田恵  脱原発弘前映画祭)       
      『ヒロシマ、そしてフクシマ』(2015  マルク・ブティジャン  脱原発弘前映画祭)
      『1968 激動の時代(前・後編)』(2018  BS1スペシャル)※     
      『それでも僕は映画を撮る~監督・大林宣彦 80歳の決意~』
      (2018 目撃!にっぽん)※
      『カナリアたちの叫び』(2018  テレメンタリー)※         
      『ソーシャルメディアの“掃除屋”たち(前・後編)』
      (2018  BS世界のドキュメンタリー)※     
      『我、生還す―神となった死刑囚・袴田巌の52年―』(2018  NNNドキュメント)※
      『ザ・ベストテレビ 2018』(2018  BSプレミアム)※         
      『NYタイムズの100日間~トランプ政権とメディアの攻防~(前・後編)』
     (2018  BS世界のドキュメンタリー)※         
      『ゴンザ~世界最初の露日辞典を作った男~』(2018  BS1)         

 11月・・・『顔たち、ところどころ』(2017  アニエス・ヴァルダ、JR  青森シネマディクト) 
      『津軽のカマリ』(2018  大西功一  つがる市シネマヴィレッジ8)       
        『Ryuichi Sakamoto:CODA』(2017 スティーブン・ノムラ・シブル)
      『ムシロ旗と星条旗~あなたの街に基地があったら』(2018 ドキュメントJ)※
      『写真は小さな声である~ユージン・スミスの水俣~』(2018  ETV特集)※         
      『首都圏の巨大老朽原発  再稼働させるのか '東海第二'』
      (2018  NNNドキュメント)※       
      『ブラックアウト~530万人の2日間~』(2018  テレメンタリー)※         
      『ラップと知事選  沖縄  若者たちの声』(2018  BS1スペシャル)※         
      『ニッポンは好きだけど  カイゴ開国10年の現実』
     (2017  第26回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品)※         
      『アメリカ“刑務所産業”』(2018  BS世界のドキュメンタリー)※                                   

 12月・・・『私が殺したリー・モーガン』(2016  カスパー・コリン)         
       『SUKITA  刻まれたアーティストたちの一瞬』(2018  相原裕美)         
       『幻を見るひと~京都の吉増剛造』(2018  井上春生)
       『オウム真理教 狂気の萌芽  坂本弁護士一家殺害事件30年』
      (2018  NNNドキュメント)※         
       『ヒトラー・クロニクル Part1』(2018  BS世界のドキュメンタリー)※         
       『ヒトラーの子どもたち』(2018  BS世界のドキュメンタリー)※       
       『罠師~片桐邦雄・ジビエの極意』(2018  ドキュメントJ)※       
       『運命の3つの都  パリ・ベルリン・ニューヨーク』
      (2018  映像の世紀プレミアム)※         
       『輪廻の少年』(2018  BS世界のドキュメンタリー)※         
       『北海道開拓~困難の果てに~』(2018  BS1スペシャル)※       
       『アイヌらしく  人間らしく~北海道150年  家族の肖像』(2018  ETV特集 )※ 
      『写真家 ユージン・スミスの戦争~タラワ・サイパン・沖縄 678日の記録~』
      (2018  BS1スペシャル)※         
       『ロストフの死闘  日本vs.ベルギー 知られざる物語』(2018  BS1スペシャル)※
       『ヤメ暴~漂流する暴力団離脱者たち~』
      (2018  JNNネットワーク協議会賞大賞)           


 毎回、「収穫」を選んでいるが、今回も数本紹介する。まず、映画から。
   
 『ハロルドとリリアン ハリウッド・ラブストーリー』(2015  ダニエル・レイム)。1950年代からハリウッドで活動したハロルド・マイケルソンとリリアン・マイケルソン夫妻。50年にわたり100本以上のハリウッド作品の絵コンテと映画リサーチを担当した夫婦の映画人生を追う。デミル監督『十戒』・ヒッチコック監督『鳥』・ニコルズ監督『卒業』などの名場面を創った絵コンテを描いたハロルド、映画リサーチャーとして絶大な信頼を得ていたリリアン。フランシス・フォード・コッポラやメル・ブルックス、ダニー・デヴィートらのインタビュー、リリアンが語る亡き夫ハロルドの回想などから、二人の軌跡を描く。   
 


 『チャルカ~未来を紡ぐ糸車~』(2016  島田恵  脱原発弘前映画祭)。デビュー作『福島 六ヶ所 未来への伝言~』(2013)で注目された島田恵監督が「核のゴミ処分」問題に切り込む。高レベル放射性廃棄物の地層処分研究施設がある北海道幌延町の隣町で酪農を営む一家、もう1つの研究施設がある岐阜県東濃地方、世界初の地下処分施設建設中のフィンランド・オンカラ、原子力大国フランスの処分計画地ビュール…世界各地への取材を通じて、人類の未来の生き方を提出する意欲作。なお、「チャルカ」とはインドの手紡ぎ糸車。ガンジーが指導したインド独立運動のシンボル。   


 『ヒロシマ、そしてフクシマ』(2015  マルク・ブティジャン  脱原発弘前映画祭)。ヒロシマに原爆が投下された日、1945年8月6日から65年にわたって被爆者の治療と反核運動を続けてきた肥田舜太郎医師。内部被曝の恐ろしさ、危険性を世界に訴えてきた肥田医師の足跡と、福島原発事故以降の活動を、フランス人監督マルク・ブティジャンが密着取材で追う。原爆と原発、隠されてきた真実を徹底的に告発する肥田医師の姿は、私たちにとって一つの救いだ。   


『顔たち、ところどころ』(2017  アニエス・ヴァルダ、JR  青森シネマディクト)。『歌う女・歌わない女』(1976)・『冬の旅』(1985)・『ジャック・ドゥミの少年期』(1990)などの監督作品で知られるヌーヴェル・ヴァーグの巨匠アニエス・ヴァルダ(作中で87歳)と、写真家でアーティストのJR(作中で33歳)。54歳差のふたりは、一緒に映画を作ることにした。JRのスタジオ付きトラックでフランスの村々をめぐり、人々の顔を撮影し、大きなサイズのポートレイト作品を人々とともに作り上げていくふたり。壁に貼られた巨大な自分の写真に喜ぶ村人たち…ロードムービーであり、参加型アートプロジェクトの記録であり、そして人生讃歌でもあるドキュメンタリー。第70回カンヌ国際映画祭最優秀ドキュメンタリー賞受賞作品。 



『津軽のカマリ』(2018  大西功一  つがる市シネマヴィレッジ8)。初代髙橋竹山。数々の津軽民謡を新たな三味線局として編曲し、津軽三味線の独奏という芸域を切り開いた巨人…1998年、87歳で亡くなるまでの生涯を、彼の演奏と語りの映像、そして二代目高橋竹山ら関係者の証言で綴る、圧倒的な104分。監督は、沖縄宮古島の古謡・神歌をテーマにしたドキュメンタリー『スケッチ・オブ・ミャーク』(2011)で国内外で高い評価を受けた大西功一。   


 『私が殺したリー・モーガン』(2016  カスパー・コリン)。18歳でブルーノート・レコードよりデビューし、1960年代、アート・ブレイキー&ザ・ジャズメッセンジャーズに所属しジャズ人気を牽引したリー・モーガン。天才の名をほしいままにしたこのトランぺッターは、1972年、NYのジャズクラブ「スラッグス」での演奏中、妻ヘレン・モーガンに拳銃で撃たれ、病院に移送されたが死亡した。ヘレンは、彼をドラッグから立ち直らせた、いわば恩人であった…数々の演奏の映像(もちろん音楽も)と彼らを知る人々の証言、そして自らの死の1年前に彼女が残した事件を語るテープの音声で綴られる真実。
  

 
『幻を見るひと~京都の吉増剛造』(2018  井上春生)。戦後を代表する詩人、吉増剛造。80歳を目前にした彼は、豊かな地下水で知られる京都を訪れる。2011年の東日本大震災による津波の被害を目にし、水の衝撃に言葉を失った吉増にとって、水の持つ新たな意味を求める旅だった。川端康成が「古都」を執筆した流響院をはじめ、醍醐寺、妙心寺、大徳寺、貴船神社…一編の詩を生み出していく彼の創作過程を、圧倒的な水の映像とともに綴る。世界各地の映画祭で絶賛された、驚愕のドキュメンタリー。   



テレビ・ドキュメンタリーからも数本。 
  『1968 激動の時代』(前・後編)(2018  BS1スペシャル)。国際共同制作。世界中が変革を信じて闘った1968年。その年に起こった出来事とその後の主会の潮流をインタビューと資料映像で綴る100分(前・後編合わせて)。ボブディラン、英国・ロンドン、日本・東京、米国・サンフランシスコ、ワシントン、ミシシッピ州、カリフォルニア州立大学バークレー校、フランス・パリ、イタリア・ローマ、ブラジル・サンパウロ、ドイツ・ベルリン、ベトナム・ハノイ、英国・ブライトンビーチ、ベトナム戦争…多くの映像と多くの回想。小熊英雄など日本人も登場するが、消化不良気味だと感じてしまうのは、あまりにも多くのテーマが詰め込まれているからか。語り・古谷一行(日本語版)。
 
 『ザ・ベストテレビ 2018』(2018  BSプレミアム) 。この1年間、国内の代表的なテレビ番組コンクールで最高賞を受賞したドキュメンタリー番組をNHKと民放の垣根を越えて2日にわたって放送する『ザ・ベストテレビ 2018』。今年のラインナップは、文化庁芸術祭賞「防衛フェリー 民間船と戦争」(名古屋テレビ放送)、ギャラクシー賞「教育と愛国 教科書でいま何が起きているのか」(毎日放送)、民放連賞テレビ報道番組「記憶の澱(おり)」(山口放送)、地方の時代・映像祭賞「かあちゃんのごはん」(信越放送)、放送文化基金賞・ATP賞「BS1スペシャル 父を捜して 日系オランダ人 終わらない戦争」(椿プロ/NHK)、民放連賞テレビ教養番組「知られざる被爆米兵 ヒロシマの墓標は語る」(広島テレビ放送)。この通信で私が注目した作品が多数含まれているが、ノミネート作品の紹介も含め贅沢な番組である。【ゲスト】森達也,梯久美子,小原一真,依田恵美子,斉加尚代,佐々木聡,【司会】三宅民夫,雨宮萌果。 
 
 『NYタイムズの100日間~トランプ政権とメディアの攻防~(前・後編)』(2018  BS世界のドキュメンタリー)。原題:THE FOURTH ESTATE The First 100 Days。制作:RADICALMEDIA / MOXIE FIRECRACKER FILMS(2018年 アメリカ)。トランプ大統領から“フェイクニュース”“国民の敵”と敵視されるメディアの代表格ニューヨーク・タイムズ紙。大統領就任演説に始まる100日間のニューヨーク・タイムズ紙とトランプ政権の攻防を、本社編集部とワシントン支局にカメラを据えた密着取材で描く。「ロシア・ゲート疑惑」のスクープで政権を追及し揺さぶり続ける記者たちの濃密な日々は、ドラマチックと言うしかない。   

 『写真は小さな声である~ユージン・スミスの水俣~』(2018  ETV特集)。写真集『水俣』で水俣を世界に伝えたアメリカの写真家ユージン・スミス。水俣に住み込み、患者の姿を世界に伝えた彼の生誕100年の今年、膨大なプリントと撮影時の録音が公開された。従軍カメラマンとして沖縄で負傷、戦後弱者に目を向けていった彼は、妻アイリーンとともに水俣にたどり着く…公開されたプリントと録音から、患者たちを撮り続けることに対する彼の苦悩、そして素顔が明らかになる。それについて私たちは安易な感想を述べることはできないが、関係者がユージンについて語るときの、その語り口の優しさには、何か救われる気がする。 

 『アメリカ“刑務所産業”』(2018  BS世界のドキュメンタリー)。原題:Jailed in America。制作:Submarine Amsterdam & CNN Films/The Why Foundation NHK/BBC/CBC/DR/EO/NRK/SVT/SRF-RTS(2018)。監督は、アフリカ系アメリカ人として初めてアカデミー賞監督賞を受賞したロジャー・ロス・ウイリアムズ。刑期を繰り返した親友の死をきっかけに取材を始めた彼は、激増するアメリカの受刑者数の背後に、刑務所が低賃金で製品を作る“工場”となり巨額の利益を生んでいる実態があることを知る。黒人を標的にする警察、差別的な判断をする司法、そして、9兆円もの市場規模を持つ“刑務所産業”。「新たな奴隷制」に迫るこの力作は、世界の公共放送が参加するプロジェクト「Why Slavery?」シリーズの1本。このシリーズ、11月は6本放送された。他の5本は、中東各国に出稼ぎに出向き家政婦として働く女性たちの苦境を描いた『メイド地獄』、インド人ディレクターが人口13億人の母国で起きている経済格差の暗い影を追う『児童売買の闇を追う』、今年のノーベル平和賞で世界の注目が一気に高まった少数民族の女性たちの物語『性奴隷だったヤジディの私』、キム・ジョンウン体制のもとで加速する労働者の海外派遣の実態に迫る『北朝鮮 外貨獲得部隊』、偽りの借金証書にサインしたばかりにとある家庭に家事使用人として縛られることになった女性の物語『とらわれの日々からの脱出』。   

 『ヒトラーの子どもたち』(2018  BS世界のドキュメンタリー)。原題:Hitler’s Children。制作:Gedeon(フランス  2017)。「レーベンスボルン(生命の泉)」計画。アーリア民族の「純血性」を保つためにナチスが進め、未婚女性とドイツのエリート兵との間に何万人もの子どもが生まれたこの秘密計画の舞台の一つは、パリ郊外の森に囲まれた邸宅だった…ある里親が屋根裏に隠していた手紙をきっかけに、この邸宅で生まれたある男性の出生の秘密の断片が少しずつ明らかになる。
   
 『写真家 ユージン・スミスの戦争~タラワ・サイパン・沖縄 678日の記録~』(2018  BS1スペシャル)。水俣病患者の撮影で知られる写真家ユージン・スミスは、太平洋戦争の激戦地サイパン・レイテ・沖縄の戦場カメラマンだった。玉砕の島・タラワの惨状、戦火に傷ついたサイパンの日本の民間人、収容所に避難した沖縄の人々。彼の被写体は、次第に戦争の犠牲者たちになっていく。しかし、その写真の多くは検閲により没収された…発掘されたそれらの写真と関係者の証言から、当時の戦争報道の実態を明らかにし、ユージン・スミスが伝えたかったものが何だったかを考える。

   

<後記>    映画館で2本、自主上映会で2本、スクリーンでドキュメンタリー映画を観ることができた。テレビ・ドキュメンタリーは相変わらずたくさんの秀作。今年も、幸福な出会いがあった…


(harappaメンバーズ=成田清文)
※「越境するサル」はharappaメンバーズの成田清文さんが発行しており、
個人通信として定期的に配信されております。