2020年10月14日水曜日

【越境するサル】№.203「ドキュメンタリー時評 2020年10月 ~原一男監督、八戸へ~」(2020.10.14発行)

 9月は青森で2本、そして10月には八戸で1本、興味深いドキュメンタリー作品と出会った。特に八戸では、敬愛する原一男監督のトークに参加するという、貴重な体験もすることができた。

「ドキュメンタリー時評」第8回は、「原一男監督、八戸へ」と題して『れいわ一揆』(2019原一男監督)を中心に紹介する。



「ドキュメンタリー時評 2020年10月 ~原一男監督、八戸へ~」


2020年10月3日、八戸。降りしきる雨の中、十三日町「フォーラム八戸」にたどり着いた。『ゆきゆきて神軍』(1987)や『全身小説家』(1994)の原一男監督が、自らの作品『れいわ一揆』(2019)上映に合わせて八戸にやって来るというのだ。多少無理をしてでも行かなければならない。そう考え、数日前に決意した。


『れいわ一揆』は、2019年の参議院選挙で注目を集めた「れいわ新選組」の候補者たちを追ったドキュメンタリーだ。女性装の東大教授、闘う元コンビニ店長、公明党に反旗を翻す創価学会員、北朝鮮に弟を拉致されていた兄、元ホームレスのシングルマザー、ALSの身体障害者……候補者たちを束ねる山本太郎も負けてしまうような強烈な個性の候補者たち。女性装の東大教授・安富歩を中心にすえて構成された、2019年参院選の「闘いの記録」であるこの作品は、候補者たちの人間的魅力に支えられた見事な群像劇(※注)に仕上がっている。彼らひとり一人のその後がたまらなく気になる映画だ。

▼『れいわ一揆』予告編



休憩を挟んで248分の上映修了後、原監督とプロデューサー(撮影も担当)の島野千尋氏のトークを聴くことができたのは収穫だった。観客が少なかったのは残念だったが……。




さて、9~10月、青森市「シネマディクト」では、かなりの数のドキュメンタリーが上映された。これから上映予定のものも含めて列挙してみる。

・9/5~18『プラド美術館 驚異のコレクション』(2019 バレリア・パリシ監督)

・9/19~10/2『ジャズ喫茶ベイシー Swiftyの譚詩(Ballad)』(2020 星野哲也監督)

・9/26~10/2『僕は猟師になった』(2020 川原愛子監督)

・9/26~10/2『zk 頭脳警察50 未来への鼓動』(2020 末永賢監督)

・10/3~23『マイルス・デイヴィス クールの誕生』(2019 スタンリー・ネルソン監督)

・10/24~11/13『メイキング・オブ・モータウン』(2019 ベンジャミン・ターナー、ゲイブ・ターナー監督)


このうち、『プラド美術館』と『ジャズ喫茶ベイシー』を観ることができた。


『プラド美術館 驚異のコレクション』は、すでにこの通信で紹介しているように、2020年4月に公開予定だった映画である。だが、コロナの影響下、公開は延期となり、ようやく7月から全国公開された。青森県では9月にようやく上映の運びとなったが、長く待った甲斐があったというか、圧倒的な体験をすることができた。


ベラスケスとゴヤとエル・グレコをはじめとするプラド美術館の数々の至宝の映像はもちろん、館長や学芸員の詳細な解説、保存や修理の作業風景等々、美術館の全貌に迫る作品である。主要な画家の人生に踏み込んでいるところも評価したい。とりわけ、ゴヤに対して特別な思いを抱いている私にはありがたかった。


▼『プラド美術館』予告編


『ジャズ喫茶ベイシー Swiftyの譚詩(Ballad)』は、岩手県一関市のジャズ喫茶「ベイシー」とそのマスター・菅原正二を描いた作品である。



50年の歴史を持つ「ベイシー」は、菅原のオーディオへのこだわりにより、世界一のサウンドが聴ける聖地としてジャズファンに愛されてきた。本作は、菅原と多くの人々(ミュージシャンを含む)のインタビューと「ベイシー」での貴重なライブ映像により、この店の魅力を余すところなく伝えている。

「ベイシー」を訪れる日は来るだろうか……。


▼『ジャズ喫茶ベイシー』予告編


 「フォーラム八戸」と「フォーラム盛岡」の今後の上映予定(上映中のものを含む)も紹介しておく。「シネマディクト」と同じように、音楽ものが充実している。


まず、「フォーラム八戸」。

・10/2~15『パヴァロッティ 太陽のテノール』(2019 ロン・ハワード監督)

・10/16~22『メイキング・オブ・モータウン』

・10/30~11/12『ジャズ喫茶ベイシー Swiftyの譚詩(Ballad)』

・10/30~11/5『わたしは金正男を殺してない』(2020 ライアン・ホワイト監督)


 続いて、「フォーラム盛岡」。

・10/23~29『マイルス・デイヴィス クールの誕生』

・10/30~11/5『真夏の夜のジャズ 4K』(1959・2020 バート・スターン監督)

・11/6~12『メイキング・オブ・モータウン』


 

(※注)

原一男監督は、「山形国際ドキュメンタリー映画祭2017」でも見事な群像劇であるドキュメンタリー『ニッポン国VS泉南石綿村』(2017)を発表し、市民賞を獲得している。

https://www.yidff.jp/2017/cat013/17c026.html



<後記>

  とりあえず、県内で映画館に行くことは今後もできそうだ。次の「ドキュメンタリー時評」は、12月発信を目指す。ずっと王兵監督の特集を準備してきたが、どうなるか。

 次号は、「harappa映画館」の上映作品紹介。



(harappaメンバーズ=成田清文)

※「越境するサル」はharappaメンバーズの成田清文さんが発行しており、

個人通信として定期的に配信されております。




0 件のコメント:

コメントを投稿