2023年5月1日月曜日

【越境するサル】№.211「珈琲放浪記プラス~湯島聖堂から無縁坂へ~」(2023.05.02発行)

 

20233、東京滞在3日目。湯島聖堂から神田神社、そして湯島天神を過ぎて東京大学鉄門へ。無縁坂を下り、森鴎外『雁』の舞台を追体験する……

 

 

「珈琲放浪記プラス~湯島聖堂から無縁坂へ~」

 

 2023316日。山の上ホテルの「和朝食」から一日が始まった。コロナ禍のため部屋食だが、これはこれで落ち着く。今回、ホテルの名店(バーも含めて)を満喫することは出来なかったので、この朝食が貴重な体験となる。

 

この日は、神田駿河台のホテルから上野駅まで歩こうと決めていた。

今までも、上野駅を起点として歩くことは多かった。例えば浅草や谷根千、さらには珈琲の有名店を求めて南千住方面まで、数キロくらいなら全く気にならなかった。

今回のルートに決めたのは、以前から湯島・本郷の珈琲店から御茶ノ水駅界隈まで歩いてみたいと思っていたこと(だから山の上ホテルにしたのだ)と、出発の10日程前に観たテレビ番組の影響だった。

NHKBSP「プレミアムカフェ選」で再放送された「名作をポケットに 森鴎外 雁」(2001年放送)。山本和之氏がナレーションを務めるこの番組の中で、作家・立松和平(1947-2010)が『雁』の舞台である無縁坂や鴎外ゆかりの地を歩く。

私も、無縁坂を歩きたいと思った……




 朝食後、御茶ノ水駅付近の聖橋を越え、湯島聖堂を訪れた。

 湯島聖堂は、5代将軍徳川綱吉によって現在の上野公園内から移された林羅山の私塾と聖堂(孔子廟)が始まり。以後、幕府直轄の昌平坂学問所となり、明治維新後はのちの東京大学へと発展していく。


 

初めて訪れた聖堂の敷地内。巨大な孔子像と、壮麗な門と、花と、遊ぶ子どもたち。






 

聖堂の向かい側の神田神社の参道にひっそりと佇む「乙コーヒー」で少し遅いモーニング、トーストと「乙ブレンド1番(深煎り)」を注文する。





ここから、ゆっくりと、上野駅を目指す。

まずは、まっすぐ湯島天神へ。

 


そのまま通り抜け、切通坂を上る。




数分歩くと、春日通りに面した本郷三丁目(住所は湯島)の喫茶「TIES(タイズ)」にたどり着く。ここで極深煎りの珈琲を、濃厚なケーキとともに味わうのを楽しみにしていたが、店内は満席。これは覚悟していたことなので、迷わず珈琲豆を買って店を出る。店の数種類の豆をブレンドした、一番深煎りの「オリジナル」。この旅行で出会った珈琲の中で、おそらく最も苦い商品のはずだ……




 

店からほど近い、「春日局之像」から麟祥院横の小径に入り、まるで迷路のようなコースを歩き、東京大学鉄門の角に出る。もう、森鴎外『雁』の舞台だ。そして私は、「無縁坂」を下る。






 

道の右側の塀の向こうは「旧岩崎邸庭園」。ここまで来て、ようやく小説の舞台の地図が私の中で出来上がった。


 

小説のもうひとつの重要な舞台、不忍池はもうすぐそこだ。






(harappaメンバーズ=成田清文)

※「越境するサル」はharappaメンバーズの成田清文さんが発行しており、

個人通信として定期的に配信されております。