今月、サッカー「クラブワールドカップ決勝」観戦の為、東京に2泊した。試合会場は新横浜だが、例によってあちらこちら足を延ばし、1日1軒のペースで「珈琲放浪」を試みた。
「珈琲放浪記~本郷三丁目、横浜元町そして渋谷~」
月曜日だというのに、ひっきりなしに人々が行き交う渋谷駅前。その雑踏から少し離れて宮益坂を上り、しばらくして今度は下り、小路をのぞく。
正確な場所を地図で確認していなかったので、果たしてたどり着けるか不安だった。方向としては、間違ってないはずだ。もしかしたら明治通りに近いのかもしれない。何度か小路を通り抜け、ついにその店を見つけた。明治通りを原宿方面へ歩いてすぐの路地を右手に入った所にある、「茶亭
羽當(ちゃてい はとう)」。午前11時開店だとしたらあと10分ほどだ。店内の灯りが見える。
開店と同時に店内に入り、長いカウンターの奥の席を目指す。店内は、骨董に囲まれた昭和の喫茶室といった趣き。カウンターの正面には(そして店内のありとあらゆる場所にも)、夥しい数のカップ&ソーサー。何故か、懐かしい。初めて入った店で感じるこの既視感は、最近の「珈琲放浪」で何度か経験したものだ。
「羽當オリジナルブレンド」とシフォンケーキ(メイプル)を注文し、ようやく一息つく。あわただしかった土日を思い出しながら、まずは一服(もちろん煙草ではない)といったところか。喫茶店とは、こういうふうに利用するものなのだ…
土曜日、午後1時、例によって上野駅に到着し浅草口のコインロッカーに荷物を預けると、すぐ本郷三丁目の「TIES(タイズ)」に向かった。前回最後に訪れた店だ。迷わずに、イブラヒムモカ(マタリ)の深煎り。相変わらず、強烈な苦みと官能的な味わい。いいスタートだ。数年間熟成させたオールドビーンズ珈琲(フレンチロースト)「ファイブブレンド」200gをお土産に購入し(後日、自宅で堪能したこの豊潤な世界について、いつか語るべきだろう)、上野公園に向かう。この日は、国立科学博物館の「世界遺産
ラスコー展」見学がメイン。クロマニヨン人による芸術とも言える洞窟絵画は、今回の旅行で外すわけにはいかなかった。
日曜日、宿泊している五反田のホテルから渋谷に向かい、東横線特急で横浜、元町・中華街駅へ。この駅周辺で気になる喫茶店がいくつかあったが、ちょうど10時開店の元町「無」に少し早く入れてもらった。私のお気に入りの店は大体そうなのだが、カウンター正面にたくさんのカップ&ソーサー。自分で好きなカップを選び、この店のブレンド「無珈琲」と手作りレアチーズケーキのセットを注文する。
「無珈琲」は、ちょうど良い深煎り。レアチーズケーキともよく合う。朝の喫茶店特有の雰囲気を味わいながら、一日の計画を立てる。午後からは新横浜、横浜国際総合競技場(日産スタジアム)。クラブワールドカップ3位決定戦および決勝、レアルマドリッドvs鹿島アントラーズ。チケットを握りしめ、会場を目指す。
…さて、渋谷の「茶亭 羽當」だが、深煎り好きの私には少し物足りないが優しい味わいのブレンドと、これは大満足のケーキでリラックスした時間を過ごし、気がつくと何組かの客がボックス席にいる。それぞれ談話やパソコン仕事。そのうち、旅行者らしき客もカウンターへ。もう一度メニュー表を眺めると、私の好きな「マンデリン」や気になる「エージング珈琲」も目につく。もう一杯といきたいところだが、風邪と疲労のせいか胃の調子があまり良くない。味わえないなら無理をしないと決断し、店を出た。
次の上京の際にはこの店からスタートしたいものだ、といつものように思った。
<後記>
ここしばらく、「上京篇」とも言うべき「珈琲放浪記」が続いたが、今回で一段落といったところか。年内に「今年出会ったドキュメンタリー」を発信したら、来年の『越境するサル』について考えるとしよう。3月の上映会「ドキュメンタリー最前線 2017」については1月中に発信したいが、そのほかは未定。
(harappaメンバーズ=成田清文)
※「越境するサル」はharappaメンバーズの成田清文さんが発行しており、
個人通信として定期的に配信されております。