2018年4月5日木曜日

【越境するサル】№.172「スペイン紀行(下)~バルセロナ~」(2018.4.3発行)


 バルセロナ空港にたどり着いた時、すでに午後8時をまわっていた。体の疲れはあったが、明日への期待からか、心は軽かった。何といっても、バルセロナなのだ…
 
 
     「スペイン紀行(下)~バルセロナ~」
 
 カタルーニャ州の州都バルセロナ。まず、この街への思いから語るべきだろう。それは、1冊の本との出会いから始まった。
 ジョージ・オーウェル『カタロニア讃歌』(1938)。のちに、スターリン主義の寓話とも言うべき『動物農場』(1945)や、全体主義的ディストピア(反ユートピア)の世界(それは監視管理社会なのだが)を描いた『1984年』(1949)で知られるオーウェルは、1936年、スペイン内戦に赴く。そして、フランコのファシスト軍に対抗するため、共和国側つまり人民戦線側の義勇兵として内戦に参加する。このファシスト軍との戦いと、バルセロナで起こった人民戦線内部の内紛・市街線の体験をもとに書かれたルポルタージュが『カタロニア讃歌』である。そこには、人民戦線を内紛に導いたスターリン主義への批判とともに、スペイン人やカタルーニャ人に対する愛情や尊敬も語られていた。そしてここカタルーニャは、内戦に勝利したフランコによってカタルーニャ語の使用を禁じられ、フランコ死後の1977年、ようやく自治権を獲得する。
 昨年、カタルーニャ独立をめぐるさまざまな対立が報じられるたびに、私は『カタロニア讃歌』や、その映画版ともいうべき『大地と自由』(1995、ケン・ローチ監督)を思い起こした…

 バルセロナ到着の晩、添乗員さんに案内されたホテル近くのバル(レストラン)で遅い夕食をとった。小皿料理(タパス)とワインとビール(カーニャ)。店の人たちとの軽い会話も経験し、少しずつ、バルセロナに来ているという実感がわいてきた…

  スペイン6日目。午前8時半、ホテル出発。バルセロナ市内観光。

 今回のバルセロナへの旅は、一人の天才建築家の足跡をたどることに費やされた。アントニ・ガウディ(1852-1926)。カタルーニャ生まれで、スペイン19世紀末の新しい芸術・モデルニスモを代表する建築家。彼のサグラダ・ファミリアを見るために、世界中から人々がバルセロナを目指す。私たちもだ。

 バスの窓から、バルセロナの街を撮影しようと何度もシャッターを切る。最初の目的地グエル公園まで、次々に現れるすべての街角が魅力的に感じる。


 グエル公園到着。モニュメントゾーンに入場する。


 ガウディのパトロン、実業家グエルは市街を見下ろす山の手に60戸の宅地を造成し、イギリス風の田園住宅街を造ろうと構想した。彼の依頼を受けて、ガウディは1900年に建設を開始するが、1914年、建設は中止。のちに公園として開放された。カラフルな破砕タイルで装飾されたベンチが設置されたテラス、ばら装飾を天井に持つ列柱ホール、これもカラフルな破砕タイルで飾られたドラゴンをシンボルとする中央階段…どこを歩いても、ガウディの強烈な色彩と曲線が私たちを驚かせる。


 バルセロナの街を一望できるテラスから、建設中のサグラダ・ファミリアと地中海の水平線が見える…


 さて、サグラダ・ファミリアだ。その姿が近づくにつれ、向かう人々の歓声のようなため息のようなざわめきが、さざ波のように伝わってくる。ついにここにたどり着いたのだ、という感慨に、少し興奮している自分がいる。


 サグラダ・ファミリア、聖家族贖罪教会。1883年、31歳のガウディが2代目建築家に就任、1926年に事故で不慮の死を遂げるまでその建設に情熱を注いだ。

 まず、ガウディが自ら指揮をとった、北東側の入口にあたる「生誕のファサード」を見上げる。キリストの生誕にまつわる装飾が施されており、日本人建築家の外尾悦郎氏も彫刻を担当している。


 聖堂内部は、ステンドグラスの光に満たされ、白い無数の柱が立ち並ぶ、まるで森のような空間。2010年、正式にカトリックの教会として認定された。


 キリストの受難・死・復活を表現した、南西側の入口「受難のファサード」から外に出る。興奮状態はずっと続いている。


 工事開始は1882年。完成予定は、ガウディ没後100年にあたる2026年…


 午前最後の訪問場所は、バトリョ邸。繊維業を営むバトリョ家の依頼を受け、ガウディが増改築を手がけた(1904-1906)。この建物のテーマは海。海面を思わせる、色とりどりのガラスモザイクが埋め込まれた外壁。海底を思わせる建物内部。波打つような天井。すっかりガウディの世界に染まってしまった私たち…


 昼食は、バトリョ邸からほど近いバルへ。添乗員さんに案内されて、計10人でピンチョス(パンに具を載せて楊枝で刺したタパス)を楽しむ…

 午後は、日本語ガイド付きオプショナルツアー「カタルーニャ公営鉄道で行く 世界遺産コロニアルグエル午後半日観光」。この日は月曜のため、ピカソ美術館もミロ美術館も定休日。選択肢として「F.C.バルセロナのカンプノウ・サッカースタジアム見学」もあったが、コロニアグエル教会を選択した。この選択が、実は大正解だったのだ。

 バルセロナで少年サッカーのコーチをしているという男性ガイド(なんと盛岡出身だった)と旅行社の研修生(女性)、それに私たち2人…4人で路線バスと電車を乗り継いで、目的地を目指す。この日のコロニアグエル教会・オプショナルツアー参加者は私たち2人だけ。贅沢な旅となった。

 スペイン広場駅からFGC(カタルーニャ鉄道)の電車に乗り、25分でコロニアグエル駅へ。駅の外に出たら、チケット販売所であるインフォメーションへ向かう。


 このインフォメーションの展示室で、ガウディが10年の歳月をかけて研究していた「逆さづりアーチ構造模型」を観ることができた。ガウディ建築の秘密を垣間見たような気分を覚える。


 コロニアグエルとは、ガウディのパトロンであるグエルが作った、自らの事業の繊維工場を中心とした工業団地。敷地内に労働者の住居や学校、病院とともに礼拝用の教会堂も建てられた。1898年、ガウディはこの教会堂の建設を依頼され、10年にわたる「逆さづり実験」を経て、1908年着工。しかし1914年、ガウディは建設から退き、サグラダ・ファミリアに専念。その翌年、助手たちによって半地階部が落成。教会堂として利用されたが、1916年、建設は中断。今でも上層は未完成である。

 松林に囲まれた小高い丘の傾斜地に、ガウディの最高傑作とも言われる(2005年、世界遺産に登録)その教会はある。


 ガウディ建築定番の破砕タイルを用いた壁の装飾、蝶の羽根を思わせるステンドグラス、建物を支える柱をつなぐレンガのアーチ、放射線状に張りめぐらされたヤシの木のような梁…その複雑な形状に圧倒され、心を奪われる。しかも見学者は私たち4人だけの貸し切り状態…


 その帰り道。スペイン広場で現地ガイドと別れ、コルツ・カタラナス大通り(グラン・ビア)をホテルまで歩く。バルセロナ大学を目印に。この日はあと、シーサイドのレストランで皆と一緒の夕食。シーフードのタパスを食べながら、カヴァ。スペイン最後の夜…

 スペイン7日目。早朝、ホテルを出発、バルセロナ空港へ。830分、バルセロナ発、950分、マドリード・バラハス空港着。黙々と手続きを済ませ、歩き、待機し、歩く。


 バラハス空港でスペイン最後の食事、生ハム(ハモン・セラーノ)サンド。そう言えば、スペイン最初の食事も生ハムだった。毎朝の食事も生ハム。生ハムで始まり、生ハムで終わる旅…

 1220分、マドリード・バラハス空港を発つ。



<後記>

 やっと、「スペイン紀行」を完結させることができた。書くことによって、旅の全行程を確認し、さらに、自分がスペインに求めていたものを発見することができた。結局、この紀行文は、自分に向けて書かれたものだ。
 しばらく、『越境するサル』は休息に入る。だが、次に発信したいものを、早くも考えている自分がいる…




(harappaメンバーズ=成田清文)
※「越境するサル」はharappaメンバーズの成田清文さんが発行しており、
個人通信として定期的に配信されております。


2018年4月4日水曜日

【越境するサル】№.171「今年出会ったドキュメンタリー 2018年1-3月期」(2018.3.31発行)


20181-3月期に出会ったドキュメンタリーについて報告する。

 
   「今年出会ったドキュメンタリー 20181-3月期」

 20181月から3月までに観たドキュメンタリーを列挙する。映画の方はすべてDVDでの鑑賞。( )内は製作年と監督名と鑑賞場所等、はテレビ・ドキュメンタリー。

1月・・・『ピケティ公開講座 「21世紀の資本」から導き出された
                          研究結果報告』(2017
         『フィレンツェ、メディチ家の至宝 ウフィツィ美術館』
                        (2016  ルカ・ヴィオット)
         THE SPIRIT OF 45  1945年の精神』(2013  ケン・ローチ)
                                      
         『欲望の資本主義2018~闇の力が目覚める時~』
                       (2018  BS1スペシャル)
        『いつだって、人生は楽しい  ワイン醸造家・仲田晃司』
                (2018  プロフェッショナル 仕事の流儀)
         『新宿・花園神社  夢は、夜ひらく』(2018  ドキュメント72時間)
         『俺は工場の鉄学者』(2018  サタデードキュメント)
         『八戸』(2018  新日本風土記)
         『カキと森と長靴と』(2018  ETV特集)
         『津軽海峡 年越しフェリー』(2018  ドキュメント72時間)
         『拉致と言えなくて~寺越さん母子の55年~』
                      (2018  NNNドキュメント)

2月・・・『デブラ・ウィンガーを探して』(2002  ロザンナ・アークエット)
         『ザ・ビートルズ EIGHT DAYS A WEEK ‐The Touring Years
                    (2016  ロン・ハワード)         

         『長過ぎた入院  精神医療・知られざる実態』(2018  ETV特集)
         『アメリカ  自由の国の秘密と嘘』
                   (2018  映像の世紀プレミアム)
         『見えない壁~福島・被災者と避難者~』
                    (2018  NNNドキュメント)
         『嘘塗りの骨~アイヌ人骨返還問題の悲痛~』
                   (2018  テレメンタリー)
         『あたいはやっちょらん  大崎事件 再審制度は誰のもの』
                      (2018  NNNドキュメント)
         『東京クルド/TOKYO KURDS』(2018  テレメンタリー)※  
        
3月・・・『レオナルド・ダ・ヴィンチ  美と知の迷宮』
              (2016  ルカ・ルチーニ、ニコ・マラスピーナ)
         『パッション・フラメンコ』
              (2016  ラファ・モレス、ぺぺ・アンドレウ  
                       
         『オリバー・ストーンONプーチン 前・後編』
                  (2018  BS世界のドキュメンタリー)
         COOL!下町 浅草・バッティングセンター』
                     (2018  ドキュメント72時間)
         『ヒッチコック幻の映画~最期に仕掛けたサスペンス~』
                     (2017  ノンフィクションW)
         『我道驀進~鷹木信悟の世界』(2018  サタデードキュメント)
         『写真家  荒木経惟  77歳の切実』(2018  BSプレミアム)
         『津軽  雪空港』(2018  ノーナレ)
         『バルセロナを走る』(2018  地球タクシー)
         『乾いた河~中国・留守児童の叫び』
            (2018 ノーナレーション・ドキュメンタリー)※    

   毎回、「収穫」を選んでいるが、今回も数本紹介する。まず、映画から。

   THE SPIRIT OF 45  1945年の精神』(2013  ケン・ローチ)。 『麦の穂をゆらす風』(2006)と『わたしは、ダニエル・ブレイク』(2016)で2度カンヌ映画祭最高賞(パルムドール)に輝いた巨匠ケン・ローチ監督が、イギリス戦後史の起点となる1945年に始まる「ピープルズ・レボリューション」を描く、直球勝負のドキュメンタリー。第二次世界大戦でイギリスを勝利に導いた名相ウィンストン・チャーチル率いる保守党に大勝して成立した、クレメント・アトリー率いる労働党政権が実現したさまざまな改革。無料の国家保健サービスNHS・小学から大学まで無料の教育制度・大規模な公営住宅建設プロジェクト・基幹産業(鉄道・鉱山)の国営化等々、不可能を可能にした「福祉国家」に向けた壮大な「革命」の詳細なドキュメント。その欠陥も含めて、いま学ぶべきモデルを徹底して検証した労作である。



   『デブラ・ウィンガーを探して』(2002  ロザンナ・アークエット)。女優ロザンナ・アークエットは、ずっと疑問に思っていた。『愛と青春の旅だち』(1982)の主演女優デブラ・ウィンガーは、なぜ人気絶頂の時に引退したかロザンナは、自分がなぜ家庭と仕事を両立させようと犠牲をはらいながら女優を続けているのか自問自答し、同じ質問を敬愛する女優たちにインタビューという形でぶつける。インタビューに答える女優は34人。ウーピー・コールドバーグ、ダイアン・レイン、メグ・ライアン、シャロン・ストーン、ロビン・ライト・ペン、シャーロット・ランプリング、ジェーン・フォンダ、エマニュエル・ベアール彼女たちが語る、女優として、女として、母親としての体験と悩みは生々しいそしてロザンナは、デブラ・ウィンガーにたどり着く。


   『ザ・ビートルズ EIGHT DAYS A WEEK ‐The Touring Years』(2016  ロン・ハワード)。ザ・ビートルズの1960年代の軌跡を、『ダ・ヴィンチ・コード』のR・ハワード監督が当時の貴重な映像と音源で描く音楽ドキュメンタリー。リヴァプールでのスタートから、ハンブルクでの無名時代、そして1962年以後の世界中を熱狂に巻き込んだワールドツアー自分たちの求める音楽と現状のジレンマから、スタジオでの音楽づくりにシフトしていく後半の4人の姿は、説得力にあふれている。



   『レオナルド・ダ・ヴィンチ  美と知の迷宮』(2016  ルカ・ルチーニ、ニコ・マラスピーナ)。イタリアのルネサンスを代表する知の巨人ダ・ヴィンチ。その実像を、ダ・ヴィンチ研究の第一人者たちの解説と再現ドラマで紹介する。ダ・ヴィンチの傑作絵画「ミラノの貴婦人の肖像」が、パリのルーブル美術館の展示室の壁から取り外され、ミラノ万博のダ・ヴィンチ特別展の会場へと運ばれる様子からスタートする本作は、ダ・ヴィンチのフィレンツェ時代からミラノ時代、そしてフランスで迎えた晩年までをたどる。「最後の晩餐」と「モナリザ」の映像が素晴らしい。


   『パッション・フラメンコ』(2016  ラファ・モレス、ぺぺ・アンドレウ)。現代フラメンコ界最高のダンサー、サラ・パラス。従来のフラメンコのルールを打ち破る革新的な舞台作りで世界から注目される彼女の、巨匠たちに捧げた『ボセス  フラメンコ組曲』初演までの3週間、そして世界ツアーに密着する。パリからメキシコ、アメリカ、日本、スペインローリング・ストーンズのサックス奏者ティム・リースとのコラボ、新人時代を過ごした東京のタブラオ『エル・フラメンコ』再訪など注目すべきシーンだけでなく、全編にあふれる彼女の情熱、生き方そのものが感動的なドキュメンタリー。


   テレビ・ドキュメンタリーからも数本。

   『俺は工場の鉄学者』(2018  サタデードキュメント)。制作:BSN新潟放送(初回放送20161231日)。「2017年日本民間放送連盟賞」 テレビ教養番組 優秀賞受賞。金属加工産業の集積地、新潟県燕三条地域。三条市の鍛冶職人・日野浦司さんは、独学で冶金学に取り組み、海外からも高い評価を受ける高品質の刃物を造り出してきた。また、三条市の鋳鉄メーカーの社長・内山照嘉さんは、ホーロー鍋の常識を覆す薄くて軽いフライパンづくりに挑むかつて何度も危機を乗り越え、いま世界を相手に品質で勝負し続ける職人たちの姿を追う。

   『カキと森と長靴と』(2018  ETV特集)。東日本大震災の津波によって、死に絶えたかに思われた宮城県気仙沼の海。カキ養殖家・畠山重篤は海の回復力を信じ、震災直後から養殖を再開する。「森は海の恋人」という名言を生んだ彼の海と山の融合を目指す生き方を、畠山のモノローグと4K撮影の映像で追う。

   『長過ぎた入院  精神医療・知られざる実態』(2018  ETV特集)。日本の精神科病院に1年以上入院している人は18万人。5年以上はおよそ10万人いる世界の病床のおよそ2割が集中し、世界から「深刻な人権侵害」と勧告を受けてきた、精神科病院大国、日本。原発事故をきっかけに、転院した長期入院患者たちの内実が見えてきた。彼らは長期入院の必要があったのか?人生の大半を精神科病院で過ごした人々の人生を追う。語りは髙橋美鈴アナ。         

   『東京クルド/TOKYO KURDS』(2018  テレメンタリー)。東京周辺に広がるトルコ系クルド人のコミュニティ。20年前から住み始めた約1500人の人々が暮らしている。トルコでの迫害と差別を逃れて日本で暮らす彼らに、居場所はあるのか?12年前来日した青年オザン(18)は難民として認められていないため、働くことが法律で禁じられている。不当労働に頼りながら家族と暮らす彼には、ひとつだけ夢があるが、その前に法律の壁が立ちはだかるオザンのひと夏を追う。制作はテレビ朝日。

 『オリバー・ストーンONプーチン 前・後編』(2018  BS世界のドキュメンタリー)。原題:THE PUTIN INTERVIEWS  制作:Showtime Documentary Films(アメリカ 2017年)。映画監督のオリバー・ストーンが、2年にわたりロシア大統領プーチンと対談を重ねた記録。元KGB職員のプーチンが権力を掌握していく過程、国家観、国際政治への対し方、家族観、宗教観、人生観などが語られる。大統領の私生活や、映画『博士の異常な愛情』をふたりで鑑賞した後の意見交換など、随所に興味をひくシーンがあるが

   『乾いた河~中国・留守児童の叫び』(2018  ノーナレーション・ドキュメンタリー)。「留守児童」とは、出稼ぎなどで両親がそばにいない16歳未満の子供のこと。中国には、約902万人いるという。中国の農村部にある寄宿制学校に通う留守児童たちと、その家族や先生らの姿を「ノーナレーション」、声や表情などを通じて描く。この作品は50分枠、NHKBSだが、NHK総合テレビでも3月末、「ノーナレ」25分枠3本が放送された。日本一雪の多い青森空港で滑走路を除雪する精鋭部隊「ホワイトインパルス」に密着した『津軽  雪空港』、戦乱が続くシリアを逃れ難民認定された家族を描いた『ラーマのつぶやき』、修復腎移植を行っていたことでマスコミや学会からバッシングを受けた医師をめぐる『悪魔の医師赤ひげか』。それぞれ興味深い「ノーナレーション」の試みだった。

  
<後記>

  いろいろな事情で、ドキュメンタリー映画の本数をかせぐことはできなかった。したがって、テレビ・ドキュメンタリーも含めてだが、紹介する本数はいつもより少ない。だが、その中で、印象に残る秀作にはわりと出会えたのではないかと思っている。4月以降も、優れた作品と出会えますように
  次号は、「スペイン紀行(下)~バルセロナ~」。写真の整理も含めて、現在編集中。


(harappaメンバーズ=成田清文)
※「越境するサル」はharappaメンバーズの成田清文さんが発行しており、
個人通信として定期的に配信されております。