実は前日、自分でも驚くくらいネガティブな状態で、久しぶりに泣きすぎて鼻水がつまって、息ができないくらいだった。次の日の朝も頭が重く、行く直前まで迷っていた。でも、お昼近くまで横になっていて起き上がったら、「よし、行ける!行くなら今でしょ!」と思った。芸術は、人の気持ちをチェンジできる。
ジョー・プライス氏は、伊藤若冲コレクションでは最大で、世界有数の江戸絵画コレクションの収集家である。初めて、葡萄を描いた水墨画に心を奪われた時、建築家のフランク・ロイド・ライトとご一緒で、若冲が描いたとは知らず購入した。それから、江戸時代の個性的な画家たちの作品に魅せられ、次々に求めてきた。後に奥様となる通訳の悦子夫人に出会い、彼女の手助けでコレクションが充実していった。
今回の展示は、アメリカの南カルフォルニアで知った、東日本大震災の様子・福島第一原子力発電所の事故・・・そして、瓦礫の中で泥をかぶっていた一本の梅の木に花が咲き、桜や水仙も花をつけている様子に涙が止まらない、そんな被災地のみんなに自分たちのコレクションを観てもらって、勇気づけることはできないだろうか?そんな思いから出発して実現したもの。
プライス式楽しみかたというものがあって、昔から私が好きな曽我蕭白の「寒山拾得図」を、誰にでも解りやすく「<かんざん>さんと<じっとく>さん」と書き、右手で巻き紙をかざすのが寒山、筍のようなほうきを持つのが拾得、と大きな文字で説明していたのがよかった。「プライス動物園」、「美人大好き」などとテーマ別になっていて、ガラスケースに入っていないものや、時々クイズのようなものもあったりして、楽しめる展示となっていた。
いちばん楽しみにしていた「鳥獣花木図屏風」は、「花も木も動物もみんな生きている」とタイトルが付けられていた。生で観て、お風呂に入りたくなった。銭湯に富士山の絵、それと同じものを感じた、ちょっと冗談だが。なぜ銭湯なのかと言うと、8万6千個ものタイルのような桝目で形成されているから。この仏教的であり、南国のパラダイスのような巨大な屏風が、江戸時代に描かれていたことにヒドク感動。色彩も鮮やかだし、「なに、これー?」って感じ。個人の持っている感性って変わらないのだなと。新しいも古いもない。芸術は普遍的である。
前にある若い男の子に、「芸術で人が救われることもあるんじゃない?」という話をした時に、「いや、それよりもじぇんこけろ!でしょ?」と言われた時に、かなりショックを受けたことがある。でも、やっぱり私は違うと思う。
展示を全部観終わった後、まだプライス夫妻はいて、ちょうど誰も居なかったので、この際パワーをもらいたいと握手をしていただいた。すごいの!プライス氏の掌は、分厚くてとても熱かった。ついさっき観た若冲の「虎図」・「足をなめるトラ」の、猫のようにピンクではない大きな肉球がすぐさま思いだされた。奥様には、テレビで見てから来たかったことを伝えると、「よろしくお願いします」と言われた。因みに、プライス氏はゴダール氏に悦子夫人はオノ・ヨーコ女史に似ているなと思ったのは・・・私だけかも。芸術は世界を救う。
次回は、7月27日(土)~9月23日(月・祝)まで福島県立美術館で開催される。「東日本大震災復興支援特別展『若冲が来てくれました』プライスコレクション江戸絵画の美と生命」。ぜひ、沢山のいろんな人々に、感じていただきたいなと思う
帰りには、美味しい焼肉と冷麺を食べてすっかり機嫌が直っていた。
(harappaメンバーズ=KIRIKO)
芸術は世界を救うでまとめたのがストレートでかっこいいね!
返信削除金の話をした人は恥を知るべき。
日本人なら金でなく、人間をつくれと思う。
芸術を無用と考える貧困さからは何者も生まれはしない。
これからも無理せず、連載を続けてね☆
asanoaoさん、ありがとうございます!自分はいがいと脆いので、なるべく強くいっているだけですよ。そう信じたいし。さっき、テレビである女性作家が、一生懸命生きている人は、幸せとか不幸とか考えないというような話をしていて、それはそれで納得してしまうわけで。でも、やっぱり心が貧困なのは反対かな。感謝☆感謝☆
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