2018年12月11日火曜日

【越境するサル】№.182「珈琲放浪記~ムンクとフェルメール、そして上野界隈で珈琲」(2018.12.4発行)


11月の末、「大人の休日」を利用して東京に向かった。上野で開催されている「ムンク展」と「フェルメール展」が主な目的だが、上野界隈の珈琲店との新たな出会いにも期待していた…

 
     「珈琲放浪記~ムンクとフェルメール、そして上野界隈で珈琲」


1 「アメ横ダンケ 上野」 東京都台東区上野

   12時半、上野駅に到着。新幹線の車内販売がなかったので、とにかく何か口に入れたかった。まっすぐアメ横に向かう。あちこち迷いながら何とか目指す店の近くにたどり着いた時、もう午後1時を過ぎていた。スマホを頼りに路地裏に入る。「ダンケ珈琲店」の看板が見える。ここだ…





   カウンター5席のみの店内。荷物も置けないほど狭い空間だが、座ってしまえば落ち着く。店の定番である「バターブレンドコーヒー」を注文し、マスターに促されて正面の壁一面に陳列されたコーヒーカップの中からお気に入りを選ぶ。そして「ケーゼクーヘン」。何やら、ゆったりとしたソファーのある高級喫茶のようなオーダーだが、ここは路地裏のカウンター5席…





   「ケーゼクーヘン」とはドイツのチーズケーキ。天然酵母と数種のチーズを焼き上げたこの店のオリジナル「ケーゼクーヘン」は、なるほど美味い。ふかふかのパンとチーズ、甘味と塩味、絶妙のバランスがいい。あっという間に完食。珈琲もよく合う…というか、ケーキを食べるスピードに合わせて、あまり味わうことなく飲んでしまった。のとごしがよかったことは、間違いない。
   神戸発祥、吉祥寺から移ってきた「アメ横ダンケ」。一度は行く価値あり。場所はわかりづらいが…

   午後2時過ぎ、東京都術館へ。「ムンク展―共鳴する魂の叫び」(2018.10.272019.1.20)。




   ノルウェー・オスロ市立ムンク美術館が誇る世界最大のコレクションを中心に、代表作「叫び」(油彩・テンペラ画バージョン、初来日)など約100点を展示。肖像画から晩年の作品に至るまで、ようやくその全貌に触れることができた気がする。もちろん写真撮影禁止なので、気に入った作品の絵葉書で我慢。





   この日は、ここまで。娘一家の住む、西武池袋線沿線の町へ。
  



2 「エスプレッソファクトリー」 東京都文京区千駄木

   午前10時、山手線日暮里駅下車。ここから、いわゆる「谷根千」を経由して上野公園に向かう。途中、魅力的な珈琲店がひしめいているが、行く店は決めていた。
   谷中霊園を通り、東京メトロ千代田線千駄木駅方面を目指す。千駄木駅1番出口から徒歩3分、団子坂中腹にその店はあった。「エスプレッソファクトリー」、思ったより小さな店だ…



   ここで飲むのは、もちろんエスプレッソ(ダブル)。小さなパンと一緒に味わったが、なかなか美味い。あっという間に飲み干してしまった。もっとゆっくり味わいたくて、もう一杯ダブルを注文する。今度は冷めるまで(冷めてからもなかなか味わい深いのだ、エスプレッソは)時間をかけて、外の風景、行き交う人々を眺めながら味わう。



   午前11時、上野公園に向かって歩き始める。
   団子坂下から不忍通りを根津に向かう。右手に根津神社。千代田線根津駅あたりで言問通りと交錯すると、しばらく小路に迷い込み一息つく。もう少し歩けば不忍池が見えるはずだ…
   上野公園で楽しむ人々を横目で見ながら、まず上野の森美術館を目指す。日時指定のチケットはひと月半前に買っていたが、行列状況を見たかった。私の前の回の行列を整理する係員に話しかけ、13時入場者の行列スタートは12時半頃と確認、昼飯調達のため公園をいったん出る…こうして、様子を見ながら、行列のほぼ一番乗りの位置を確保した。




   「フェルメール展」(上野の森美術館、2018.10.52019.2.3)。
   オランダ絵画の巨匠、ヨハネス・フェルメール。現存する作品35点のうち「9点までが東京にやってくる日本美術展史上最大のフェルメール展」と銘打たれた今回の展示(この日は8点)を逃すわけにはいかなかった。「牛乳を注ぐ女」「手紙を書く女」「真珠の首飾りの女」「ワイングラス」…欧米の主要美術館から特別に貸し出された、日本初公開作を含む傑作の数々が集められた「フェルメール・ルーム」を真っ先に目指す。
   何度も何度も作品の前に立ち、その記憶を頭に焼き付ける。そして、8枚すべての絵葉書と公式ガイドブックを買い求め、美術館を後にした。これだけでいい…






3 「自家焙煎  稲荷町珈琲」 東京都台東区東上野

   「フェルメール展」のあと、無性にアイスコーヒーが飲みたくなった。しかし、すぐ近くにあるいくつかの「チェーン店」では飲みたくなかった。時間もかなり余裕があった。そこで思い出したのが、かつて東京メトロ銀座線稲荷町駅付近にあることを確認していた、小さな店だった。たしか、立ち飲みの店のはずだ。15分も歩けば着くだろう…
   記憶していた場所とは少し違ったが、10分ほどでたどり着いた。上野の同潤会上野下アパートがあった場所だという。



   珈琲豆の販売店なので沢山の種類の豆が揃っているが、店内の小さなカウンターで立ち飲みもできる。迷わずアイスコーヒーを注文する。値段は、なんと180円。3種類が飲めるホットコーヒーも同じ値段だ。しかし、味はなかなかのものだ。苦味もコクもしっかりしている。珈琲豆も驚くほどの安さ。深煎りのマンデリンを200グラム購入する(自宅で試しているが、かなり美味しい)。
   店内の壁にはブルースのレコードジャケット。小さいけれど、心地のいい空間…





   上野駅付近のチェーン店には「カフェ難民」があふれているが、そこから少し足を延ばせば、個性あふれるさまざまな珈琲と出会うことができる。そっちのほうが楽しいのに…上野界隈珈琲放浪は、まだまだ続く。


<後記>

   今回の旅は、「フェルメール展」の計画から始まった。どうせ行くなら「ムンク展」も。そして「谷根千」も歩きたい…こうして娘一家訪問と友人との再会を含む、東京行きが決まった。
   次号以降の予定だが、年末には「今年出会ったドキュメンタリー」発信。その前か後に、「珈琲放浪記~青森県の珈琲を歩く(その3)~」。日本映画についても準備している。




(harappaメンバーズ=成田清文)
※「越境するサル」はharappaメンバーズの成田清文さんが発行しており、
個人通信として定期的に配信されております。