先月、「大人の休日」で東京とその近辺を旅した。妻と一緒に娘一家の家を訪れるのが主たる目的だったが、例によって美術館や博物館をまわり、さらにワイナリーとビアホールに足を延ばし、結局観光を満喫した。そして最終日、ひとりで上野から御徒町へ向かい、湯島方面まで歩き、ある喫茶店にたどり着いた。
「珈琲放浪記~東京、湯島から本郷三丁目へ~」
湯島天神を左に見て、坂の道をしばらく歩く。すでに本郷三丁目、その店はあった。「TIES(タイズ)」、「Old beans coffee & Hand made cake」とある。店の前と店内入り口付近にはケーキを買い求める数人の客がいたが、幸いなことに喫茶部分はすいているように見えた。カウンターの奥に座り、メニュー表をじっくり眺めてから、おもむろにレアチーズケーキとマンデリンを注文する。自家焙煎の珈琲は20g110㏄、ネルドリップで抽出。マンデリンは期待通りの味わい。濃厚かつ妥協なき苦さだが、すっきりとしたのど越しに満足。これも水準をはるかに超えているレアチーズと交互に味わいながら、いつのまにか飲み干してしまった。この日ここまで珈琲を我慢してよかった、と素直に思った。
この旅では、毎日美味い珈琲にありついた。
1日目は、上野駅から御徒町「カフェ・ラバン」に直行。前回の訪問で気に入っていた「フレンチブレンド」と、高い評判のサンドウィッチで昼食を済ませ、「マンデリン」100gを購入。その後、御徒町駅ガード下の「2k540 AKI-OKA ARTISAN」で工芸品を物色し、上野公園へ。東京都美術館「ゴッホとゴーギャン展」を堪能し、池袋経由で娘一家宅へ。
2日目は、中央本線新宿発特急「かいじ」で山梨県勝沼ぶどう郷へ。笛吹市一宮町の「ルミエール」ワイナリーのレストラン「ゼルコバ」でランチ、「光甲州」(白)と「シャトールミエール」(赤)の2種類のワインを楽しむ。その最後に出されたのが、山梨県韮崎市で熟成された「コクテール堂」のエイジングコーヒー。レストランで美味い珈琲に出会うというのは、ちょっと得をした気分だ。
3日目は、娘一家とともに半日近く「恵比寿ガーデンプレイス」で過ごしたが、恵比寿三越地下1階「宮越屋珈琲」で飲んだエスプレッソは本当に美味しかった。エスプレッソ初心者にもわかりやすいコクと苦み、しかもたっぷりの量。さすが札幌。「宮越屋珈琲」は、札幌でも東京でもはずれがない…この日は帰り道、中村橋駅付近の自家焙煎珈琲豆販売店「まめせん珈琲」で「まめせんブレンド」と「トラジャ」(もちろんどちらも深煎り)を購入。どちらも有名店と比べても遜色ない味わい、しかもリーズナブル。
そして、最終日がこの「TIES(タイズ)」だ。
何やら2杯目が飲みたくなって、もう一度メニュー表を見せてもらう。オールドビーンズ珈琲、紅茶、アイス珈琲等々選択肢は豊富だが、やはり何かストレート珈琲が飲みたかった。そして目に留まったのがイブラヒムモカ(マタリ)の深煎り。モカの深煎りは今年いくつかの店で出会い、その都度新鮮な感動を与えてもらっていた。しばらく待って、1杯目とは違う薄手で小ぶりのカップで出されたイブラヒムモカは、もう絶品と言うしかない味わいだった。濃厚でコクがあるのはもちろんだが、甘味というか何やら色気を感じてしまった。途中から砂糖を少量加えて味の微妙な変化を楽しみ、2杯目の珈琲を堪能した。まだ味わってみたいメニューはたくさんあるが、今日はこれで満足。近所で蕎麦でも食べて、それから湯島天神をのぞいて、上野に戻ろう。東京国立博物館の特別展「平安の秘仏」を鑑賞する時間も確保しなければ。
こうして、今回も満足すべき「珈琲放浪」だった。次の東京(もう再来週だが)も「TIES(タイズ)」からスタートしたいと思い始めているが、どうなることだろう。
<後記>
前号(№151)紹介したharappa映画館「ミステリアスな男たち&女たち」は、12月3日、のべ244名の観客を動員して終了した。観客の反応も良好で、次のharappa映画館にも期待がかかるところだが、プレッシャーも若干あり。
次号は、クラブワールドカップ決勝観戦の旅。というより、その際の「珈琲放浪」の記録。
(harappaメンバーズ=成田清文)
※「越境するサル」はharappaメンバーズの成田清文さんが発行しており、
個人通信として定期的に配信されております。
0 件のコメント:
コメントを投稿