2014年8月4日月曜日

【越境するサル】No.129「珈琲放浪記~アイスコーヒー 2014年夏~」(2014.07.31発行)

一昨年の夏、「珈琲放浪記~アイスコーヒー奮闘篇~」と題して、自宅でアイスコーヒー作りに奮闘する過程を発信した(※注1)。けれど今年、自分でアイスコーヒーを作る気は全く起こらなかった。「餅は餅屋」というか、自信を持ってリキッドコーヒー(ボトルコーヒー)を販売している店に身を任せてしまおう、そういう気分になったのだ。実は昨年までも、いくつかの種類は試していた。それに今年発見したものを加えて、この夏は「アイスコーヒー飲み比べ」と洒落てみた。多少、費用はかさんだが…

「珈琲放浪記~アイスコーヒー 2014年夏~」

これから、この夏に飲み比べてみたいくつかのアイスコーヒーを紹介するが、すべてリキッドタイプ(「リキッドコーヒー」や「ボトルコーヒー」などさまざまな呼び方があるが、「珈琲放浪記」では「リキッドタイプ」の「アイスコーヒー」という呼称で統一したい)である。つまり、そのままカップやグラスに注げば飲める製品だけを紹介する。こう書けば、大手や全国的なブランドを想像するかもしれないが、スーパーやデパートで普通に買えるものは最初から除外している。もっとも、その中に「思わぬ拾いもの」があれば別だが。


最初に紹介するのは、私が住む街である弘前の「成田専蔵珈琲店」。若い頃から、「弘前コーヒースクール」と呼ばれていたこの店のコーヒー(豆)を贔屓にしていた。特に、深い焙煎の「マンデリン」は私の「ソウルフード」のようなものだったと、いま思う。時が流れ、「マンデリン」の焙煎は浅くなり、つまり私の好みと一致しなくなったため、私は別の店(日本全国)の豆を探し始めた…けれど、夏、アイスコーヒーに関しては、この店のものは別格だ。一夏、6月から9月まで、「成田専蔵珈琲店」のボトルがあれば充分。さまざまな店のアイスコーヒー用の豆を購入してチャレンジする時以外は、この店のボトルを飲み続ける。氷を入れても決して水っぽくならない、適度な濃さと強さとコクを持ち、ガムシロップにもミルクにも負けない良質の苦味。他店のものを賞味する際の、基準となるべきアイスコーヒーである。


続いて札幌の「可否茶館(かひさかん)」。昨年発信の「珈琲放浪記~札幌、「再会」と「出会い」と~」の中で、この店との「再会」について少し詳しく述べた(※注2)が、今年も仕事で札幌に行く機会があったので立ち寄ることができた。もちろん、テレビ塔近くの「大通店」である。リキッドタイプのアイスコーヒーは経験済みだった。おそらく店頭に並んでいた「ボトルコーヒー・ビターテースト」が私の好みに近かったのだろうが、今回は期間限定と思われる「ハワイブレンドアイスドコーヒー」を迷わず購入、その場で発送した。「羊蹄山ふきだし湧水と新ネルドリップ法で抽出」というキャッチコピーに惹かれたのだ…その翌々日、届いたこの「ハワイブレンド」を早速試してみたが、なるほど上品な味である。水もいい。「ハワイ」とあるから、私の苦手な酸味をかなり覚悟していたが、それほど気にならなかった。酸味系が好みの人であれば、何も加えずにそのまま美味しく飲めるのではないか。


札幌からは、もう1種類発送した。札幌の深煎り珈琲の草分け的存在「インフィニ珈琲」が経営する「カフェ・ド・ノール」のリキッドタイプ・アイスコーヒー「時がくれたコーヒー」。「カフェ・ド・ノール」は、北海道庁近くのオフィス街ビル地下にひっそりと存在する、私好みの喫茶店である。地下の喫茶店、それも地下街のカフェではなくビル地下の喫茶、に信仰にも似た感情を持つ私は、店に入った瞬間からデジャヴュのような感覚にとらわれ、迷わずまっすぐカウンターの席に着いた。そしてアイスコーヒーを注文。ゆったりとした空気を感じながら、「3年間生豆を寝かせて熟成(エージング)させた珈琲豆と羊蹄山の湧き水を使用し」た「時がくれたコーヒー」を味わう…正直に言うと、熟成(エージング)させた珈琲豆・オールドビーンズを使用した珈琲はそれほど得意ではなかった。しかしこの「時がくれたコーヒー」では「深み」のようなものを味わうことができた。一口飲んで、すぐ購入決定。4本セットを発送した。家庭でも職場でも、ちょっと評判になった銘柄である。


さて、「思わぬ拾いもの」の紹介もしておこう。仙台出張の帰り、新幹線発車までの時間にコーヒーが飲みたくて駅ビル地下の純喫茶「コーヒーショップ エビアン エスパル店」(服部コーヒー直営店)に立ち寄った。そこで飲んだアイスコーヒーが気に入ったので、「有機リキッドコーヒー」を自宅用に買った。これがなかなか美味しかったのだ。キャッチコピーは、「有機グァテマラコーヒーを原料に、南蔵王天然水を使用して本格的なネルドリップ製法で抽出。飲み口のすっきりしたアイスコーヒー」。まさに「飲み口のすっきりした」アイスコーヒーだった…仙台の珈琲についても、私は過去の「珈琲放浪記」で言及している(※注3)。しかし、私が気に入った店は、どうやらリキッドタイプのアイスコーヒーを販売していないようなのだ。その他の情報もほとんどない。というわけで、駅ビル地下で入手できる(そして喫茶で飲むことができる)アイスコーヒーは、「思わぬ拾いもの」と言える。


最後に紹介するのは、「びーんず亭特製リキッドアイス」。京都錦小路入り口(高倉通下ル)の自家焙煎珈琲豆の販売専門店「びーんず亭」(※注4)で販売している「ワンランク上のアイス用ブレンド豆」である「プレミアムアイス」を使用したリキッドタイプである。「びーんず亭」の珈琲豆は、我が家の定番となっている「マンデリン・ビルセルクシ」をはじめ各種試してきたが、マンデリンをベースにコロンビア、ブラジルをブレンドした「プレミアムアイス」はなるほど「ワンランク上のアイス用ブレンド豆」という看板に偽りなしの名品である。私も何度か豆で購入し、家でアイスコーヒー作りにチャレンジしたが、今年はリキッドアイスに頼ることにした…ちなみに店のキャッチコピーは「なめらかなコクと程よい苦味のバランスにこだわり、雑味のないスゥーとぬけるキレを持たせつつ、あとくちには『アイスコーヒーを飲んだなぁ~』との余韻が感じられます」である。全く、このキャッチコピーそのままの味。この味にたどり着くまで、コンスタントに同じ味を出し続けるようになるまで、さぞかし長い道のりだっただろうなと思いつつ、夏の定番「びーんず亭特製リキッドアイス」を今日も味わう。最初はそのまま、次にロックアイスを入れて、さらに自家製ガムシロップを入れて、最後にミルクを入れて、4つの味を確かめつつ。

これで発信する予定だったが、発信直前にもう1種類追加することになった。


おまけの一品。弘前「うつわ コーヒー豆や 豆人(まめと)」の「特上アイス」。「豆人」は、美濃の作家物を中心とした陶器と和雑器、それに20種類以上の珈琲豆を販売する店である。前から気になっていた店だが、偶然訪れることができた。陳列されていた陶器が気に入ったので、いずれ再訪することになるだろう。リキッドコーヒーは3種類あるが、私の好みに最も合いそうなのがこの「特上アイス」だと思われた。ラベルにはこうある。「深煎りのコーヒー豆を北海道に送り北海道羊蹄山の天然水『名水きょうごく』を使いネル布を用いてドリップした特製コーヒーです。」またしても、羊蹄山…原料原産地名には、ブラジル・コロンビア・インドネシアとある。完全に私の好みだ。購入してすぐ飲んでみたが、思ったより酸味を感じる。しかし、ロックアイスと馴染んでくると酸味は気にならなくなり、ガムシロップやミルクに負けない苦味も発揮し始めた。少し、飲み続ける価値がありそうだ。

最初と最後が、弘前のアイスコーヒーである。かつて私はこう書いた。「素敵な喫茶店があふれているわが弘前だが、私の珈琲の好みが極端なせいもあって『珈琲放浪記』で紹介する喫茶にはなかなか出会えないでいる。だが、アイスコーヒーに限れば、かなりいい線を行っているのではないかと考えている。」今も、この考えは変わらない。「弘前のアイスコーヒー」を基準に、各地のアイスコーヒーを飲み比べる試みは、これからも続く。

(※注1)
No.107「珈琲放浪記~アイスコーヒー奮闘篇~」
http://harappa-h.org/modules/xeblog/?action_xeblog_details=1&blog_id=532

(※注2)
No.117「珈琲放浪記~札幌、「再会」と「出会い」と~」
http://npoharappa.blogspot.jp/2013/06/no117-20130620.html

(※注3)
No.103「珈琲放浪記~自家焙煎・深煎りの街 仙台~」
http://harappa-h.org/modules/xeblog/?action_xeblog_details=1&blog_id=520

(※注4)
No.108「珈琲放浪記~京都 三条から錦小路、河原町界隈へ~」
http://harappa-h.org/modules/xeblog/?action_xeblog_details=1&blog_id=535

 <後記>
 7月一杯で「アイスコーヒー飲み比べ」はいったん終了させ、発信する。なかなか楽しい「飲み比べ」だった。周囲も巻き込んで、ちょっとした「アイスコーヒーブーム」を作り出すことかできたことも収穫だった。
次号は「『越境するサル』的生活」にチャレンジする。この4月から8月までの精神生活を、「ある1日」に集約させることができれば…

(harappaメンバーズ=成田清文)

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