9月28日、harappa映画館は「こんな愛もある」と題して3本の「洋画」を上映する。
スペインの巨匠アルモドバルとドイツの名匠シュレンドルフの最新作、サリンジャーの謎の生涯に迫る実録…どれも話題性は充分、もちろん映画の質も保証付き。スクリーンで観る価値ありの3本。
「アルモドバル、シュレンドルフ、そして『ライ麦畑…』~上映会への誘い~」
「アルモドバル、シュレンドルフ、そして『ライ麦畑…』~上映会への誘い~」
「第31回harappa映画館」で上映される作品は、『ジュリエッタ』(2016 ペドロ・アルモドバル監督)・『ライ麦畑の反逆児 ひとりぼっちのサリンジャー』(2017 ダニー・ストロング監督)・『男と女、モントーク岬で』(2017 フォルカー・シュレンドルフ監督)の3本。私にとっても、思い入れのあるラインナップとなった。
『ジュリエッタ』の監督ペドロ・アルモドバルは、1951年スペインで生まれた。1967年、映画監督になる夢を抱いてマドリードへ移るが、フランコ独裁政権によって国立映画学校は閉鎖。以後さまざまな仕事に従事し、フランコ政権から民主化へ移行するなかで起こった反権威的な芸術運動に参加。1980年、初の長編映画を自主制作、初期作品の独特なストーリーと世界観、強烈な色彩感覚は国内外で注目された。
7本目の『神経衰弱ぎりぎりの女たち』(1988)でヴェネツィア国際映画祭脚本賞を受賞、アカデミー外国語映画賞にもノミネートされ、国際的に高い評価を受ける。以後、『キカ』(1993)、『オール・アバウト・マイ・マザー』(1999、アカデミー外国映画賞)、『トーク・トゥ・ハー』(2002、アカデミー脚本賞)、『ボルベール〈帰郷〉』(2006、カンヌ国際映画祭脚本賞)等々多くの作品を発表し、巨匠と呼ぶにふさわしい活躍を続けている。
『ジュリエッタ』は20本目の長編監督作品で、主人公ジュリエッタの現在をエマ・スアレス、若い頃のジュリエッタをアドリアーナ・ウガルテが演じている。2016年4月にスペインで一般公開され、6月には第69回カンヌ国際映画祭のコンペティション部門でプレミア上映された。9月には、第89回アカデミー賞外国語映画賞のスペイン代表に選ばれている。
物語はスペイン・マドリードから始まる。一人で生活しているジュリエッタは、信頼する恋人ロレンソにも打ち明けられない秘密を持っていた。ある日、音信不通の一人娘を見かけたと知人に言われ、衝撃を受ける。一人娘のアンティアは、12年前に理由を語らぬままジュリエッタの前から消えてしまっていた。封印していた過去と向き合い、娘との和解を求めて苦悩するジュリエッタ…見事な色彩と、物語の世界に引き込むテンポと、観終わったあとの心地よい余韻を、私たちは堪能する。
『ライ麦畑の反逆児 ひとりぼっちのサリンジャー』は、2019年1月1日に生誕100周年を迎えた小説家J・D・サリンジャー(1919-2010)の半生を描いたドラマ。
1951年に出版された、作者の分身ともいうべきホールデンを主人公とする『ライ麦畑でつかまえて』は、その内容が反道徳とされて保守層から非難されるが若者たちの圧倒的な支持を受けた。現在までに6000万部以上の売り上げを記録し、日本でも1964年に野崎孝訳(『ライ麦畑でつかまえて』、白水社)が、2003年に村上春樹訳(『キャッチャー・イン・ザ・ライ』、白水社)が出版されている。
1953年、短編集『ナイン・ストーリーズ』、1961年、『フラニーとズーイ』、1963年、『大工よ、屋根の梁を高く上げよ/シーモア―序章―』を発表。この「グラース家」シリーズは刊行が続くものと思われたが、1965年発表の『ハプワース16、1924年』を最後に完全に沈黙、作家業から事実上引退した。以後、晩年に至るまで、その生活は謎に包まれていた。
『ライ麦畑の反逆児 ひとりぼっちのサリンジャー』の監督は、本作が長編監督デビュー作となるダニー・ストロング。サリンジャー役をニコラス・ホルト、師匠バーネット役をケビン・スぺイシーが演じる。原作は、『サリンジャー
生涯91年の真実』(ケネス・スラウェンスキー著、田中啓史訳、晶文社)。
描かれているのは、20歳で作家を志望した1939年から、作家活動を引退した1960年代までの日々。コロンビア大学の創作学科に編入したサリンジャーは、ウィット・バーネット教授との出会いにより才能を開花させ、教授が編集長をつとめる文芸誌で初めて原稿料を手にする。その後、出版社が発行する文芸誌への作品掲載が決定するが、第二次大戦により掲載は見送られ、サリンジャーも召集により戦地に赴く。最前線で地獄を体験した彼は、戦後もそのトラウマに苦しみながら初長編『ライ麦畑でつかまえて』を完成させる。そして、突然、名声を手に入れる…師バーネットとの「つながり」が心に残る作品である。
『男と女、モントーク岬で』は、『ブリキの太鼓』(1979)などで知られるドイツの名匠フォルカー・シュレンドルフが描く「大人のラブストーリー」である。そのように、キャッチコピーでは謳っている。
フォルカー・シュレンドルフは1939年生まれのドイツの映画監督・脚本家。1960~1980年代、世界の映画界を席巻したドイツの映画運動ニュー・ジャーマン・シネマの代表的監督である。
『テルレスの青春』(1966)、ハインリヒ・ベル原作の『カタリーナ・ブルームの失われた名誉』(1975、マルガレーテ・フォン・トロッタと共同監督、なおトロッタとは1971年結婚)で評価を確立した後、1979年にギュンター・グラス原作の『ブリキの太鼓』を発表。この作品は、第32回カンヌ国際映画祭でパルム・ドール(最高賞)受賞、翌1980年の第52回アカデミー外国語映画賞を受賞した。
『テルレスの青春』(1966)、ハインリヒ・ベル原作の『カタリーナ・ブルームの失われた名誉』(1975、マルガレーテ・フォン・トロッタと共同監督、なおトロッタとは1971年結婚)で評価を確立した後、1979年にギュンター・グラス原作の『ブリキの太鼓』を発表。この作品は、第32回カンヌ国際映画祭でパルム・ドール(最高賞)受賞、翌1980年の第52回アカデミー外国語映画賞を受賞した。
『男と女、モントーク岬で』では、ハリウッドで活躍するスウェーデンの名優ステラン・スカルスガルドと、harappa映画館でも上映した『東ベルリンから来た女』(2012)・『あの日のように抱きしめて』(2014)の主演女優ニーナ・ホスが共演している。
舞台はニューヨーク。過去の恋の思い出を綴った新作小説を書き上げた作家のマックスは、そのプロモーションのためニューヨークを訪れた。そこで彼は、かつての恋人レベッカと再会する。レベッカはなかなか彼と会おうとはしなかったが、ニューヨークを去る3日前、彼女からモントーク岬への旅の誘いが来る。そこは恋人だった二人の思い出の場所だった…さて、この物語を「ラブストーリー」と言ってしまっていいのか。それは映画を観てから考えよう。
舞台はニューヨーク。過去の恋の思い出を綴った新作小説を書き上げた作家のマックスは、そのプロモーションのためニューヨークを訪れた。そこで彼は、かつての恋人レベッカと再会する。レベッカはなかなか彼と会おうとはしなかったが、ニューヨークを去る3日前、彼女からモントーク岬への旅の誘いが来る。そこは恋人だった二人の思い出の場所だった…さて、この物語を「ラブストーリー」と言ってしまっていいのか。それは映画を観てから考えよう。
9月28日は、harappa映画館へ。
日程等は次の通り。
9月28日(土) 弘前中三8F・スペースアストロ
「こんな愛もある」
10:30
『ジュリエッタ』(99分)
13:30
『ライ麦畑の反逆児』(106分)
16:00
『男と女、モントーク岬で』(106分)
1回券 前売 1000円 当日 1200円 会員・学生 500円
3回券 2500円(前売りのみの取り扱い)
※1作品ごとに1枚チケットが必要です。
※1作品ごとに1枚チケットが必要です。
チケット取り扱い
弘前中三、まちなか情報センター、弘前大学生協、コトリcafe(百石町展示館内)
詳細は、次をクリックせよ。
https://harappa-h.org/contents/20190928harappamovie.php
<後記>
今年度のharappa映画館は、9月・11月・2月の3回を予定している。「洋画」・「邦画」・「ドキュメンタリー」の順となる。
次号は、「今年出会ったドキュメンタリー 2019年7-9月期」。その次は、山形国際ドキュメンタリー映画祭の報告(珈琲放浪付き)。
(harappaメンバーズ=成田清文)
※「越境するサル」はharappaメンバーズの成田清文さんが発行しており、
個人通信として定期的に配信されております。
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