「珈琲放浪記~青森県の珈琲を歩く(その2)~」
7月某日 青森市古川 「ザ ロビー ウミネコ(The Lobby UMINECO)」
用事で青森市を訪れた際、4時間ほど空白ができた。映画を1本観るとして、始まる前に珈琲を飲む余裕がありそうだった。こんな時いつも訪れるのが、古川ニコニコ通り「ザ ロビー ウミネコ」。「関東からやって来た若夫婦の店」「珈琲とスコーンが美味しい」、という友人からの情報だけを頼りに、その前の年に開店したばかりのこの店を訪れたのが2年ほど前。以来、私にエスプレッソの飲み方を教えてくれる「師匠」であるマスターと、珈琲によく合うスコーンを提供してくれる奥様との会話を求めて、たびたび顔を出すようになった。「喫茶」でも「カフェ」でもなく「ロビー」を名乗るこの店に。
この日は、夏一番の暑さ。迷わず、「エスプレッソ・アイスコーヒー」を注文する。私の好みを考慮した、ブラジル・グァテマラ・マンデリンのブレンドだ。それと、ジャム・生クリーム付きの「スコーン(塩バター)」。映画鑑賞前には、ちょうどいい組み合わせだ。一気に食べ、一気に飲み干す…
https://twitter.com/TheLobbyUmineco
映画館は、いつもの「シネマディクト」(古川)。「ドイツの名匠」フォルカー・シュレンドルフ監督の『男と女、モントーク岬で』(2017)。シュレンドルフ監督の『ブリキの太鼓』(1979)に出会ったことにより、私はその原作者ギュンター・グラスの文学にのめり込むようになった。私にとって、大切な監督のひとりである。
『男と女、モントーク岬で』は、かつての恋人との再会のドラマだ。新作のプロモーションのために恋の思い出の地ニューヨークを訪れた作家マックスは、かつての恋人レベッカと再会を果たし、幸せだった頃の2人が訪れた場所・モントーク岬への旅の誘いを受ける…マックスを演ずるのはスウェーデンの国民的名優・ステラン・スカルスガルド、そしてレベッカ役には、クリスティアン・ペッツォルト監督の『東ベルリンから来た女』(2012)・『あの日のように抱きしめて』(2014)などの作品(どちらも「harappa映画館」で上映した)で存在感を示したニーナ・ホス。キャッチコピーは「79歳の名匠フォルカー・シュレンドルフがどうしても描きたかった、艶やかな大人の愛の物語」。なるほど、と思う。私も、監督の気持ちがわかるくらいには「大人」になった。
8月某日 弘前市城東(および弘前市百沢岩木山神社前)「成田専蔵珈琲店」
夏、岩木山神社を訪れるたびに気になっていた珈琲屋があった。弘前市城東に本店がある「成田専蔵珈琲店」の出店。「成田専蔵珈琲店」の珈琲を創業以来ずっと飲み続けてきた私だが、岩木山神社前で味わう機会はなかなかなかった。この夏、家族で神社を訪れた際、思い切って立ち寄ってみた。
注文したのはもちろんアイスコーヒー。店の外、パラソルの下で飲むと、飲み慣れたはずのアイスコーヒーが一段と美味しい。
その帰り、本店でアイスコーヒーのボトルを購入する。いつもの夏の、いつもの楽しみ…
後日(10月)、本店で「SINZAN」(インドネシア・バリ 中深煎り)を味わったが、想像以上の美味しさだった。甘味・苦味・コクのバランスが絶妙で、かつて(随分昔の話だ)この店の「マンデリン」に求めていたものを思い出した。もう少し「深煎り」に近ければ最高なのだが…おっとこれは、単なる私の好みだ。
9月某日 青森市昭和通り「青森コーヒーフェスティバル 2018」(青森市「5m COFFEE」・八戸市「6かく珈琲」)
今年で3回目を迎える「青森コーヒーフェスティバル 2018」に行きたくなって、JRで青森市に向かった。例によって映画館に行く計画とセットで、最低2軒の珈琲を味わおう。そう思ってたどり着いた青森市は、生憎の雨…交通規制がなされ、珈琲店だけで27店舗の出店で賑わう昭和通り(中三の通り)は、人・人・人…。そして、傘・傘・傘…。通り抜けることさえ難しいこの場所をいったん離れ、映画の後再び訪れることにした。
午後、いくらか混雑が緩和された通りに舞い戻り、何とか珈琲にありつく。
今年5月から、イベント出店をメインに営業している「5m COFFEE(ファイブエムコーヒー)」(青森市)。スノートップ・ブラジル・グァテマラのブレンドのみで勝負するホットコーヒーは中深煎り。なかなか、いい。何より心意気がいい。迷わず、豆も購入。
続けざまに珈琲を飲むわけにもいかないので、何度か味わった経験のある「6かく珈琲」(八戸市)を探し、もう1種類豆を購入する。「インドネシア」200g。きっと私好みの深煎りであることを確信し、家路に着いた。
来年は晴れますように…
3分で分かる全47店舗まとめ/青森コーヒーフェスティバル2018
10月某日 板柳町「クラフト小径」(野辺地町「自遊木民族珈琲」)
毎年、全国から工芸作家が板柳町の遊歩道に集結する「クラフト小径」。今年は台風の為、最初から室内(町の施設「あぷる」)で行われた。
いつも、出会いたくなるような珈琲屋が複数出店し、私は目移りしてしまうのだが、長い行列ができていて断念することも多かった。
今年は偶然、前から目をつけていた珈琲屋の前が空いている時間帯があり、ようやくその店の珈琲を味わうことができた。
野辺地町「自遊木民族珈琲」の「東ティモール」。本来私があまり得意ではない、煎りを抑えたタイプだが、予想を超えた飲みやすさ。そして喉ごし。ホットなのだが、少し冷めてくると独特の柑橘系の香りと味が際立ち、一段と美味くなる。私の珈琲の幅が広がった、と素直に喜びたい。味覚は日々、進化する…
10月某日 弘前市土手町「CAFE JEEBA」
弘前市民にとって、街をぶらぶら歩くと言えば土手町商店街をぶらぶら歩くことだ。「土手ブラ」という言葉があるくらいである。そして、一休みするのは喫茶店でなければならない…
この日も本屋とデパートをまわって、行きつけの喫茶店にたどり着いた。「CAFE JEEBA(ジーバ)」。歩道から中が見える、オープンな(オープンな気持ちになれる)店である。
いつも、この店でアイスコーヒーを飲んでいた。夏でなくても、ここのアイスコーヒーを飲むと気持ちが落ち着くから不思議だ。中に入っている氷も珈琲を凍らせたもので、いつまでも薄まることのない「持続する幸せ」のようなアイスコーヒー…
しかしこの日は、初めてエスプレッソ(ダブル)を注文してみた。外は寒かったのだ。一口飲んだ瞬間、鋭いものを感じたが、少しずつ優しさと柔らかさが伝わってきた。なかなか、いい。今度来るときは、ダブルを2杯頼んでみるか、1杯は冷たくなってから味わうように。
ちょっと幸せな気分で店を出た。地元で飲むスタンダードが、ひとつ増えた…
<後記>
「青森県の珈琲を歩く」シリーズは、まだまだ続く…次号は、12月の「harappa映画館」の紹介。寺山修司原作『あゝ、荒野』。
(harappaメンバーズ=成田清文)
※「越境するサル」はharappaメンバーズの成田清文さんが発行しており、
個人通信として定期的に配信されております。
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