2015年6月5日金曜日

【harappa Tsu-shin】弘前のアートについてあれこれ話し合う会♪



「弘前のアートについてあれこれ話し合う会」を開催します♪

自分の作品を展示してみたい!
こんなことをやってみたい!
弘前のアートについて、みんなで一緒に、あれこれ考えてみませんか?

弘前アートプロジェクト実行委員会では、
一緒に弘前のアートについて考えてくれる方を募集します!!
実行委員会の定期ミーティングに参加してみませんか?
日時は毎月第4火曜日18時~コトリカフェ(百石町展示館内)にて
誰でも参加自由ですので、少しでも興味のある方はぜひ遊びに来てください!
次回は6月23日(火)開催です。
事前の申し込みなどは必要ありません。どうぞお気軽にお越しください。

主催:弘前アートプロジェクト実行委員会
問合せ:NPO harappa ℡.0172-31-0195 e-mail. post@harappa-h.org





(harappaスタッフ=太田)



2015年4月10日金曜日

【harappa Tsu-shin】「夜行庭園」開催しました♪

みなさん、こんにちは!!
寒い日も少し続きましたが、
来週には桜が咲いているなんてルンルンですね♪

さて、少し遅くなってしまいましたが、
先月、28日に開催した「夜行庭園」についてご報告します!

場所は、藤田記念庭園洋館♪
喫茶スペースも開放していただき、
本当にたくさんの方々にご来場いただきました!

出演者トップバッターは鳴海徹朗さん♪
少しずつ暮れていく洋館の雰囲気と鳴海さんの音楽がぴったりです♪

お次はnicotoneさん♪
明るくポップなサウンドにお客さんも楽しそうです♪

3番手はオオシマコウスケ&HORNSさん♪
今日の出演者では唯一のバンド編成ということで、
会場を一気に盛り上げてくださいました♪

そして!そして!!
最後はヨーコトリヤベさんです♪
前からこの洋館で歌ってみたかったというトリヤベさん♪
洋館に響き渡るステキな音楽にお客さんも聞き入っていました♪

夜の藤田記念庭園洋館!!
会場の雰囲気も然ることながら、
ご出演いただいた4組のアーティストの音楽を、
じっくり味わうことができたイベントになったのではないかと思います♪

ご来場いただいたみなさん、
ご出演いただいたアーティストのみなさん、
ご協力いただいた大正浪漫喫茶室のみなさん、
弘前アートプロジェクト実行委員会のみなさん、
本当に、本当にありがとうございました♪

また、こんな素敵なイベントが開催できればいいなと思っております♪



(harappaスタッフ=太田)





2015年4月8日水曜日

【越境するサル】№137 「今年出会ったドキュメンタリー 2014年1-3月期」


2015年1-3月期に出会ったドキュメンタリーについて報告する。

 3ヶ月ごとに報告を行うようになって2年目。

多くのテレビ・ドキュメンタリーを紹介できるようになった。

 

    「今年出会ったドキュメンタリー 2014年1-3月期」


   2015年1月から3月までに観たドキュメンタリーを列挙する。映画の方はほとんどがDVDでの鑑賞であるが、3月に6本、スクリーンで観ることができた。( )内は製作年と監督名と鑑賞場所等、「最前線」は、harappa映画館「ドキュメンタリー最前線2015。※はテレビ・ドキュメンタリー。

 1月・・・『VERA 68~五輪の名花チャスラフスカ 栄光と失意の五十年~』
     (2012 オルガ・ソメロバー)
           『福島の未来 0.23μSv』(2013 イ・ホンギ)
           『ファイアbyルブタン』(2012 ブリュノ・ユラン)                                  
     『戦後史証言プロジェクト 日本人は何をめざしてきたのか 第5回~第8回
      (「知の巨人たち」)』(2015 NHKEテレ)※              
     『THE ’60s:「ジョン・F・ケネディ暗殺」』(2015 スターチャンネル )※            

           『わたしの村は燃えている~インド~』(2015 発掘アジアドキュメンタリー)※
           『レベル1~見過ごされた予兆~』(2015 テレメンタリー)※
           『カンフー・ガールズ~台湾~』(2015 発掘アジアドキュメンタリー)※
          『100歳、叫ぶ  元従軍記者の戦争反対』(2015 NNNドキュメント)※
     『祖国を引き裂いた真珠湾~日系二世のゼロ戦~』(2015 TBS報道の魂)
          『実録 アイヒマン裁判』(2015 BS世界のドキュメンタリー)※ 
           『悲願~再審の扉と証拠開示』(2015 テレメンタリー)※
                    
  2月・・・『アメリカ通り』(2008 キム・ドンリョン 「小川紳介賞」)
            『パーソナル・ソング Alive Inside」(2014 マイケル・ロサト=ベネット )
            『中国・日本 わたしの国』(2013 ちと瀬千比呂)    
            
         『湯気の向こうに 大将と女将 ときどき、おでん』(2015 NNNドキュメント)※
      『「清掃のプロ」スペシャル』(2015 プロフェッショナル 仕事の流儀)※
             『住民帰還~福島・楢葉町 模索の日々~』(2015 ETV特集)※
             『裁判官はその目を閉ざした~高知白バイ衝突死 疑惑の証拠はどう裁かれたのか~』
      (2015 テレメンタリー)※

             『アフガニスタンの遠い春~密着 陸軍重兵器中隊~』(2015 ドキュメンタリーWAVE)※
      『フルシチョフ アメリカを行く』(2015 BS世界のドキュメンタリー)※
            『アンジェイ・ワイダ 若き映画人たちへ贈る授業』(2015 ノンフィクションW)※
      『報道は“罪”なのか~エジプト 拘束された記者たち~』(2015 ドキュメンタリーWAVE)※
             『薬禍の歳月~サリドマイド事件・50年~』(2015 ETV特集)※         
            
  3月・・・『無人地帯』(2012 藤原敏史)
            『日本と原発』(2014 河合弘之 「脱原発弘前映画祭」)
            『フタバから遠く離れて 第二部』(2014 船橋淳 「harappa映画館」)      
      『消えた画 クメール・ルージュの真実』(2013 リティ・パニュ 「最前線」再)
            『ある精肉店のはなし』(2013 纐纈あや 「最前線」再)
            『ふたつの祖国、ひとつの愛ーイ・ジュンソプの妻ー』(2013 酒井充子 「最前線」)
            『ナショナル・ギャラリー 英国の至宝』
      (2014 フレデリック・ワイズマン 仙台チノ・ラヴィータ)      
             『ふたりの約束 魂の惣菜』(2015 プロフェッショナル 仕事の流儀)※
             『シリーズ 危険な時代に生きる 第1回~第4回』(2015 BS世界のドキュメンタリー)※
             『“3.11”を忘れない54 分断の町』(2015 テレメンタリー)※
             『父が消えて』(2015 極私的ドキュメント にっぽんリアル)※
             『漫画で人間社会を問う~東北の異端・いがらしみきお~』(2015 ノンフィクションW)※
             『冷戦終結 首脳たちの交渉~ゴルバチョフが語る舞台裏~』(2015 ETV特集)※
      『生態学者・田邊優貴子』(2015 情熱大陸)※
      『阪神・淡路大震災から20年② ガレキの街の明暗~誰のための復興か~』
       (2015 NNNドキュメント)※
       
   2015年1-3月期の印象に残った作品について数本紹介する。まず、映画から。

  『VERA 68~五輪の名花チャスラフスカ 栄光と失意の五十年~』(2012 オルガ・ソメロバー)。NHKBS1で1月2日に放送されたチェコ制作のドキュメンタリー映画。東京五輪そしてメキシコ五輪の女子体操金メダリストである ベラ・チャスラフスカの、波乱に満ちた人生の物語。「五輪の名花」と親しまれた選手時代、母国の民主化運動「プラハの春」への支持を貫いたため加えられた 当局の圧力に耐えた1968年以降、1989年のビロード革命による復権…ベラ自身がフィルムとともに語る貴重な記録。この放送自体が特筆すべき出来事。
   『福島の未来 0.23μSv』(2013 イ・ホンギ)。韓国のイ・ホンギ監督による福島の未来への警鐘。放射能測定器で線量をチェックすることが日常となった人々、彼らを含む全国から集まった 17人の市民は、1986年に原子力事故が起きた旧ソ連のチェルノブイリ原子力発電所を訪問する。現在も続く、放射能が引き起こした被害。中でも深刻な子 どもたちへの影響、それは福島の明日かもしれない。
 
 『アメリカ通り』(2008 キム・ドンリョン 「小川紳介賞」)。米 軍基地の街東豆川(トンドゥチョン)市の一角にある「アメリカ通り」。この街のクラブで働くロシア人、フィリピン人女性たち、ここで40年以上働いてきた 韓国人女性「K」…米軍基地の街で「不法就労」も辞さず米兵や仲間たちと生活を続けていく彼女たちをカメラは記録する。この作品は「山形国際ドキュメンタ リー映画祭 2009」の「アジア千波万波」部門(アジアの新人監督の登竜門)最優秀賞「小川紳介賞」を受賞した。一昨年、「BSスカパー」で過去の受賞作5本が放送 されたが、まさに珠玉の作品揃いであった。
 
 『パーソナル・ソング Alive Inside」(2014 マイケル・ロサト=ベネット )。 認知症の人々が500万人以上もいると言われているアメリカ。この人々に思い入れのある曲を聴かせることによって当時の自分や家族の記憶を呼び起こすこと ができないか。ソーシャル・ワーカーのダン・コーエンの試みは、劇的な効果を上げるプロジェクトとして全米で注目されるようになる。マイケル・ロサト=ベ ネット監督による3年に渡る取材で完成した本作は、サンダンス映画祭で高い支持を得て、観客賞を受賞。その後も世界で公開され続けている。


 『中国・日本 わたしの国』(2013 ちと瀬千比呂)。来日して20年になる、残留邦人二世山田静、59 歳。現在は東京葛飾区で、男性ばかりの同僚に混じって働く女性タクシードライバー。中国で二度、日本で一度の離婚を経て、異父兄妹4人の子を女手一つで育 て上げた「肝っ玉おっ母」だ。そんな、病気をする暇もなかったという彼女が、腎臓を患い手術をした。「長く大連の、母の墓を訪ねていないため」だと考えた 彼女は、二人の子を連れ中国に里帰りをする。カメラはその旅に同行し、彼女のルーツに迫ろうと試みる。


 『無人地帯』(2011 藤原敏史)。2011年の福島、「20km圏内」。住民が避難し、無人地帯となった被災地の風景。そして、避難させられる期日が迫る飯舘村の人々。被災地 にとどまり続ける人々と避難で故郷を追われる人々、彼らの言葉から福島の現状を浮き彫りにしようと試みた作品。公開時のプログラムには「小川プロ出身の加 藤孝信が撮影を担当。ナレーションをアトム・エゴヤン作品で知られる女優アルシネ・カーンジャンが担当し、アモス・ギタイ作品を多く手掛けるイザベル・イ ンゴルドが編集。音楽はロバート・クレイマー作品の音楽でも知られるフリージャズの重鎮バール・フィリップス。」とある。実は、この映画の冒頭のシーンに は「山形国際ドキュメンタリー映画祭 2011」で出会っていた。「山形市中央公民館」、プレスの取材室があるここの5階の壁に映し出された津波と地震の爪痕の映像。「3.11」をめぐる特集のインスタレーションのひとつだった…
  
『日本と原発』(2014 河合弘之 「脱原発弘前映画祭」)。弁護士河合弘之、弁護士海渡雄一、そして原発訴訟を共に闘う木村 結。3人は、丸2年の歳月をかけて被災地での情報収集、関係者と有識者へのインタビュー取材を続け、原発事故の背景から規制基準の問題点、エネルギー政策 の真実を徹底的に明らかにする。小出裕章、古賀茂明、青木秀樹、田中三彦、飯田哲也…彼らの語りひとつひとつが私たちの眼を開かせ、弁護士たちの活動や訴 訟は私たちを励ます。このような映画が、必要だったのだ。
  
 『フタバから遠く離れて 第二部』(2014 船橋淳 「harappa映画館」)。ドキュメンタリー映画『フタバから遠く離れて』(2012 舩橋淳監督)は、 福島第一原発事故後地域社会丸ごと移転した、福島県双葉町民の避難生活を描いた作品。町全体が全面立入禁止の警戒区域となり、町民1423人が約250キ ロ離れた埼玉県の旧騎西高校校舎へ避難。カメラは9ヶ月にわたって彼らの生活を記録した。「第二部」は、それ以後から現在に至る約3年間を記録した作品で ある。長い避難生活が続く中、町議会と町長が対立し、井戸川町長が辞任に追い込まれ、避難先で町長選挙が行われ、新町長が誕生し、役場がいわき市へ移転 し、町が帰宅困難地域に指定され、中間貯蔵施設の建設計画が起こり…そして、旧騎西高校避難所が閉鎖され、人々は去っていく。まだ、一人も、故郷への帰還 は果たしていない。

 『ふたつの祖国、ひとつの愛ーイ・ジュンソプの妻ー』(2013 酒井充子 「最前線」)。harappa映画館「ドキュメンタリー最前線2015」。韓国の国民的画家イ・ジュンソプとその妻山本方子の物語。1939年、朝鮮半島 から日本に留学し文化学院美術部に在籍していたジュンソプと、そこで学んでいた方子は恋に落ち、1945年、彼らは現在の北朝鮮・元山で結婚。しかし、戦 争終結・南北分断・朝鮮戦争・李ラインと続く激動の中、彼ら家族は時代に翻弄され、別離を余儀なくされていく…ジュンソプは1956年死去。2013年、 ふたりの生涯を描くドキュメンタリー制作のため、酒井監督は方子とジュンソプを知る人々へのインタビューを開始する。
  
 『ナショナル・ギャラリー 英国の至宝』(2014 フレデリック・ワイズマン 仙台チノ・ラヴィータ)。あらゆる領域に好奇心を持ち、ドキュメンタリー作品を作り続けてきた、巨匠フレデリック・ワイズマン。彼が30年間撮影を切望し 続けてきた英国の国立美術館、ロンドン・トラファルガー広場に建つナショナル・ギャラリー。「世界最高峰」と称えられるこの美術館の全館に3ヶ月間潜入 し、すべてをありのままにカメラに収めた至福の3時間。館内で行われる講演会、ギャラリートーク、ワークショップ、そして高度な修復作業。美術館スタッフ の情熱が、スクリーンを通して伝わってくる。
     

テレビ・ドキュメンタリーからも数本。今回も、すぐれた作品とたくさん出会うことができた。

『戦後史証言プロジェクト 日本人は何をめざしてきたのか 第5回~第8回(「知の巨人たち」)』(2015 NHKEテレ)。Eテレの大型シリーズ「日本人は何をめざしてきたのか」2015年1月は「知の巨人たち」(第5回~第8回)。
   「第5回 自らの言葉で立つ~思想家 吉本隆明~」は、戦後言論界のカリスマ吉本隆明の少年時代からその晩年にいたるまでの思索の軌跡を検証する。軍国少年であった吉本は、戦後、知識人・文学 者の戦争責任を激しく追及する活動と詩作を開始し、六十年安保ではブンド・全学連とともに行動し、その後自ら主宰する雑誌『試行』を拠点に思想家として活 躍する。詩作品、代表作『共同幻想論』、その「大衆」像、反「反核」の姿勢…西部邁、上野千鶴子、橋爪大三郎、高橋源一郎、そしてミュージシャン遠藤ミチ ロウらが語る「それぞれの吉本隆明」。吉本の全体像をつかむという意図からか、それぞれに物足りなさは残るが、さまざまな切り口を示した90分は刺激的で ある。      
  「第6回 近代とは何か 魂の行方~作家 石牟礼道子~」は、『苦海浄土』で水俣病を描いた作家・石牟礼道子の魂の軌跡とも言うべきその人生を追う。水俣の美しい自然の中で育ち、兄を沖縄戦で亡く し、戦後結婚して家族を作り、そして、筑豊を拠点とした「サークル村」に参加し、詩人・谷川雁や作家・上野英信、森﨑和江らと出会う…その後水俣病と、患 者たちと深く関わっていく石牟礼の生きざまを、息子の石牟礼道生さん、編集者の渡辺京二さん、彼女と行動をともにした人々や患者たちの証言と彼女の語りで 綴っていく。   
   「第7回 昭和の虚無を駆けぬける~三島由紀夫~」は、戦後日本を代表する文学者三島由紀夫の少年時代から1970年に自衛隊の市ヶ谷駐屯地で割腹自殺するまでの軌 跡。ドナルド・キーン、三島担当の編集者、美輪明宏、三島が結成した“楯の会”会員、三島との討論を行った東大全共闘メンバーなどの証言をもとに彼の「虚 無」を追求する。『仮面の告白』から『豊饒の海』に至る代表作品の解説も簡潔で、三島の思索の全貌が整理されている…しかし、謎は残る。   
   「第8回 手塚治虫」は、敗戦直後17歳の若さで漫画家としてデビューした手塚治虫の戦後の足跡を、漫画家の松本零士さん、萩尾望都さん、かつて手塚担当の編集者だったスタジオジブリ代表の鈴木敏夫さん、哲学者の梅原猛さん、手塚の実弟の手塚浩さんらの証言で綴る。              
      
   『THE ’60s:「ジョン・F・ケネディ暗殺」』(2015 スターチャンネル)。スターチャンネルが独占放送するトム・ハンクス製作のドキュメンタリー・シリーズ『THE ’60s』(2014 CNN)。第1回目は無料放送ということで観ることができた。1960年代のアメリカ社会で起こった「事件」、社会の変化・変遷を、当時の映像・記録と証言で描いていく。第 1回目のテーマは“ケネディ大統領の暗殺”。混乱する地元テレビ局の様子や目撃した人々の証言を、当時の放送映像や記録映像を織りまぜながら紹介する。第 2回目以降、“ベトナム戦争”・“テレビ黄金期の到来”・“英国音楽の襲来”…と続くが、残念ながら観ることはできない。

  『カンフー・ガールズ~台湾~』(2015 発掘アジアドキュメンタリー)。アジアの公共放送局4社(NHK、韓国・KBS、台湾・PTS、シンガポール・MediaCorp)が、協力して開催する国際企画提案会議「アジアン・ピッチ」。「発掘アジアドキュメンタリー」は「アジアン・ピッチ」で 選ばれた作品群、BS1放送の「BS世界のドキュメンタリー」(毎週月曜~木曜深夜24時~)の特集番組として放送。『カンフー・ガールズ』の舞台は、台 湾西北部の苗栗市にある台湾唯一の中国武術専門学校「福興武術学校」。親元を離れて寮生活を送る思春期の少女たちの厳しい訓練の日々を、国際大会で金メダ ルを狙う春如の成長していく姿を中心に追いかける。
  
 『実録 アイヒマン裁判』(2015 BS世界のドキュメンタリー)。1961年4月にイスラエルで始まった、ナチス・ドイツ下で行われた大量虐殺においてユダヤ 人の大量移送計画を指揮した人物アドルフ・アイヒマンに対する裁判。敗戦後アルゼンチンに身を潜めていた彼は、イスラエルの情報機関に逮捕され、裁判にか けられた。世界中から注目されたこの裁判で、初めてホロコーストが集中的に取り上げられ、アイヒマン自身も検事の質問に対し答えた。それは「自分は単なる 公僕であり、命令に従っただけだ」というものだったが…この裁判の記録と裁判関係者たちの証言で構成された本作品は、2011年フランスで制作された。

  『フルシチョフ アメリカを行く』(2015 BS世界のドキュメンタリー)。1959年、ソビエト連邦の最高指導者ニキータ・フルシチョフがアメリカを公式に訪問した。 時は冷戦のまっただ中、アメリカに到着した彼を待っていたのは好奇と敵意の眼だった。しかし、ワシントンから全米各地へ訪問を続けるフルシチョフの人柄 は、メディアによって全米に伝えられ、一大旋風を巻き起こしていく。アメリカとソビエト、双方の記録映像によるフルシチョフアメリカ訪問の全容。「インパ クトメディア 歴史アーカイブス賞」を受賞した、2013年フランス制作作品。
  
 『アンジェイ・ワイダ 若き映画人たちへ贈る授業』(2015 ノンフィクションW)。カンヌ映画祭パルムドールなど数々の受賞歴を誇る“ポーランド派”の巨匠アンジェイ・ワイダ。2002年、ワイダはワルシャワに 「アンジェイ・ワイダ映画学校」を設立、現在も特別授業という形で映画監督を目指す後進の指導にあたっている。2014年秋、この学校のリハーサル・スタ ジオ・コースに加わった12人の生徒が、ワイダの指導のもと課題の短編映画製作に挑む。その合評会までの生徒たちの姿を追う。なおWOWOWでは、2月、 『世代』(1955)・『地下水道』(1957)・『灰とダイヤモンド』(1958)の「抵抗三部作」と『ワレサ 連帯の男』(2013)を放送。

  『シリーズ 危険な時代に生きる 第1回~第4回』(2015 BS世界のドキュメンタリー)。アメリカと世界の気候変動や環境破壊について、その最新の状況をルポするシリーズ。2014年、アメリカで制作された9回シリーズ。
   第1回「乾く大地」は、干ばつの社会的影響を探る。ピュリツァー賞記者トーマス・フリードマンは内戦と干ばつの関係を明らかにするためシリアを訪れ、俳優 ドン・チードルは干ばつの影響で食肉工場が閉鎖されている米テキサス州を訪れ、俳優ハリソン・フォードはインドネシアの森林破壊が温暖化を促進している現 状をルポする。
   第2回「森がなくなるとき」は、森林破壊の原因をさらに追及する。アメリカで大量に消費されるパーム油の生産がインドネシア森林破壊を引き起こしたことを ハリソン・フォードがルポし、米カリフォルニア州の森林火災に立ち向かう消防士たちのもとををアーノルド・シュワルツェネッガー前知事が訪れる。さらに、 森林を枯れさせる害虫マウンテン・パイン・ビートルの生態を研究する学者の告発…破壊の現場が次々に紹介される。そして将来への道筋も。
   第3回「高潮に揺れる街」は、2012年10月、米東海岸を直撃した巨大ハリケーン・サンディの高潮で多くの住民が命を落としたニューヨーク州。地球温暖化に懐疑的な立場を取ってきた地元の共和党議員の、被災地復興に取り組む姿を取材する。
   第4回「氷と業火」は、地球温暖化に一貫して懐疑的立場をとってきたアメリカの保守派の牙城、南部の“バイブル・ベルト(聖書地帯)”の変化を追う。ノースカロライナ州の福音派の教会指導者である父と、環境問題に目覚めた娘の確執。

  『“3.11”を忘れない54 分断の町』(2015 テレメンタリー)。福島県内で発生した除染廃棄物を保管する中間貯蔵施設建設予定地の大熊町。国と予定地の地権者は交渉が難航、そして全町民の約2割を占める地権者と非地権者間に、補償の差から見えない溝が生まれている。原発事故から4年、進む分断…。制作は福島放送。

  『漫画で人間社会を問う~東北の異端・いがらしみきお~』(2015 ノンフィクションW)。宮城県仙台市を拠点に活動する漫画界の異端児・いがらしみきお(60歳)。代表作『「ぼのぼの』の他、『かむろば村へ』・ 『「I[アイ]』・『羊の木』などの作品で知られる彼は、自身も仙台で東日本大震災を経験した。その彼が今取り組んでいる連載が、宮城県の海辺の町を舞台 に震災の3年後から始まる『誰でもないところからの眺め』。復興が進む中、震災や津波がどんどん風化していく町を描く彼の、創作過程に密着する。

  『生態学者・田邊優貴子』(2015 情熱大陸)。 南極と北極をフィールドに厳しい自然環境下に生きる生物の研究を続ける、国立極地研究所の生態学者・田邊優貴子。青森県出身の「極ガール」田邊の南極調査 の姿を追いかける。100万年という時間が作り出した厚い氷の下に広がる「緑の森」。数ある「情熱大陸」の傑作の中でも、最高の1本。

<後記>
  1-3月期に観た「ドキュメンタリー映画」13本のうち4本は、harappa映画館で自分たちが上映したもの。だが、近年、映画館でドキュメンタリー映画を観るチャンスは着実に増えてきている。ワイズマンの『ナショナル・ギャラリー 英国の至宝』も、仙台を訪れた際、普通に観ることができた。このチャンスを逃してはならない。
   次号は、全くの未定。少々充電が必要か…



(harappaメンバーズ=成田清文)

※『越境するサル』はharappaメンバーズ成田清文さんが発行しており、個人通信として定期的にメールにて配信されております。



2015年3月17日火曜日

【harappa Tsu-shin】harappa映画館『忘れてはいけないことがある』



みなさん、こんにちは!

3月11日・14日とharappa映画館『忘れてはいけないことがある』を開催しました。

震災から4年を迎える3月11日には「フタバから遠く離れて 第二部」を上映。

あいにくの悪天候の中、ご来場いただきありがとうございました!!

14日には『ドキュメンタリー最前線2015』として、

「消えた画 クメール・ルージュの真実」、「ある精肉店のはなし」、

「ふたつの祖国、ひとつの愛 -イ・ジュンソプの妻-」を上映。

シネマトークには、「ふたつの祖国、ひとつの愛」の酒井充子監督が登壇!!

貴重なお話をたくさんお聞かせくださいました!


シネマトーク後には、サイン会も行われました。

たくさんの方にご来場いただき、誠にありがとうございました!!


今年度のharappa映画館は終了しましたが、

来年度もみなさんにステキな映画をお届けできるようにがんばります♪




(harappaスタッフ=太田)

2015年2月25日水曜日

【harappa Tsu-shin】「映像クリエイション講座」最終回!!

みなさん、こんにちは!
7月から開催してきた「映像クリエイション講座」が
先週末、ついに最終回を迎えました!!

講師はおなじみのNHK「テクネ映像の教室」から倉森さん、織田さん、
そして、最終回スペシャルゲストとして
青森出身の映像作家・水尻自子さんが参加してくださいました♪

ベルリン国際映画祭に2年連続ノミネートの水尻さんに
ワークショップ講師をしていただけるなんて贅沢ですね♪
水尻さんのするっと(?)ぬるっと(?)した映像作品は
一度見たら癖になること間違いなしです!



そんな水尻さんとのワークショップは、
もちろん、アニメーションづくり!!
「身体の一部」をテーマに参加者みんなでひとつの作品を制作しました♪

一人11枚のイラストを描いて、次の人へとバトンタッチ!
例えば、前の人からもらったイラストが手で、
自分の最後のイラストが足だとしたら、
“手”から“足”に変化する過程を10枚で表現するという
なかなかハードな作業です!

ということで、作業中はみなさんとっても真剣!!
講座始まって以来の静けさが約1時間続きました、、、
最年少参加の小学3年生の男の子もがんばってくれました♪

練習も含め、制作開始から約3時間!!
できあがった作品は15秒のアニメーション作品になりました!!

作品を見終わった時は、会場から思わず歓声が!!
本当にステキな作品ができあがりました!!
早く、いろんな方々に観てほしいのですが、
まだ内緒なのです。。。

なんと!!このワークショップで完成した作品は、
3月15日放送の「テクネ映像の教室」で放送されます!!!
楽しみですねー♪♪
3月15日(日)16時30分からNHK Eテレ「テクネ映像の教室」で放送予定です!

ワークショップ講師の水尻さん、
何度も青森に足をお運びいただいた倉森さん、織田さん、
そして、講座参加者のみなさん!
本当にありがとうございました!!

また来年も楽しい講座ができればいいですね♪



(harappaスタッフ=太田)

【越境するサル】 №136「『フタバから遠く離れて 第二部』と『ドキュメンタリー最前線 2015』~上映会への誘い~」

 来月、2015年3月、「harappa映画館」は4本のドキュメンタリー映画を上映する。3月11日の弘前文化センター・ホールと3月14日の弘前中三8F・スペースアストロ、「忘れてはいけないことがある」と銘打って上映される作品群を紹介する。

「『フタバから遠く離れて 第二部』と『ドキュメンタリー最前線 2015』~上映会への誘い~」

 今回の上映作品を紹介する。

   まず3月11日。ちょうど4年前、東日本大震災があり、福島第一原発によって多くの周辺住民が避難を強いられる発端となった日。船橋淳監督の『フタバから遠く離れて 第二部』(2014)を上映する。   旧騎西高校で避難生活を続ける双葉町の人々を記録した前作『フタバから遠く離れて』(2012)は、2013年4月弘前で上映され(「harappa映画館」)多くの人が文化センターに駆けつけたが、その後双葉町の人々の生活は激変していく。どこまでも続く避難生活、町議会と町長の対立、新町長の誕生…カメラはその日々を追い続ける。
   3月14日は『ドキュメンタリー最前線 2015』として3本の作品を上映する。   リティ・パニュ監督の『消えた画 クメール・ルージュの真実』(2013)は、カンボジアを舞台とする作品を作り続けてきた彼の、自らと家族の記憶をめぐる物語である。   ポル・ポト政権、クメール・ルージュ支配下のカンボジア。強制労働キャンプで少年時代を送った彼は、その過酷な労働の中で家族の多くを失った。しかし、そ の記録映像は存在しない…パニュ監督は、犠牲者が葬られている土で人形を作り、その人形たちを使って家族のストーリーを再現する。   誰も考えつかなかった土人形によるドキュメンタリー。しかし、人形たちが語りかけるものの深さは想像を超える。 

   纐纈あや監督の『ある精肉店のはなし』(2013)は、大阪貝塚市の北出精肉店の日々の記録である。4世代がともに働く家族経営の店の、当たり前の日常。 牛の飼育・屠畜・解体そして切り分けて店頭に並べ販売…そこには家族の歴史があり、いのちと向き合う人間の姿があり、日々の生活がある。   スタートの屠畜のシーンからラストまで、時間は静香に流れていくが、私たちは徐々にその世界の中に引き込まれ最後まで心地よい緊張は途切れない。   2013年の「山形国際ドキュメンタリー映画祭」で上映後、話題を呼び全国各地で上映される。2014年文化庁映画賞文化記録映画部門大賞受賞。
   酒井充子監督の『ふたつの祖国、ひとつの愛ーイ・ジュンソプの妻ー』(2014)が描いているのは、韓国の国民的画家イ・ジュンソプ(1916~56)とその妻山本方子の夫婦の物語である。   第二次世界大戦中、日本の美術学校に留学していたイ・ジュンソプと財閥企業の令嬢山本方子は恋に落ちる。1945年、戦争が続く中、方子は危険をおして朝 鮮半島へ渡りジュンソプと結婚、家庭を築く。しかし朝鮮戦争(1950~)の戦火と貧困に追われ、1952年、方子と子どもたちは栄養不良のため日本へ。 以後、1953年に特別滞在許可でジュンソプが日本に滞在した1週間を除けば、彼ら家族は離ればなれの生活だった。1956年、ジュンソプは肝臓障害で入 院、この年息を引き取る。残されたのはふたりの間でやりとりされた200通以上の手紙だった。   酒井監督の作品は、「harappa映画館」で2度上映している。『台湾人生』(2009)『台湾アイデンティティ』(2013)である。『台湾人生』上映の際にはシネマトークもお願いした。   今回、再び、シネマトークのために監督が弘前を訪れる。『ふたつの祖国、ひとつの愛ーイ・ジュンソプの妻ー』上映後、たくさんの人々とともに酒井監督の言葉に耳を傾けたい。
     
日程は次の通り。
3月11日(水) 弘前文化センター・ホール
  18:30 開場 19:00 『フタバから遠く離れて 第二部』(21:00終映予定)
3月14日(土) 弘前中三8F・スペースアストロ 
  10:30 『消えた画 クメール・ルージュの真実』
  13:30 『ある精肉店のはなし』
  16:00 『ふたつの祖国、ひとつの愛ーイ・ジュンソプの妻ー』
      ◎上映終了後、酒井監督によるシネマトークを開催

当日 1200円
3回券綴り 2500円(前売・予約のみ取扱い)
※1作品ごとにチケットが必要です
店頭発売弘前中三、コトリcafe(弘前市立百石町展示館内)、 紀伊國屋書店 弘前店、まちなか情報センター、弘前大学生協
※『越境するサル』はharappaメンバーズ成田清文さんが発行しており、個人通信として定期的にメールにて配信されております。

  『ドキュメンタリー最前線 2015』
前売 1000円
詳細は、次をクリックせよ。


<後記>

   4本の映画すべて、観てほしい作品である。ぜひ足を運んでほしい。次回については未定。


(harappaメンバーズ=成田清文)

※『越境するサル』はharappaメンバーズ成田清文さんが発行しており、個人通信として定期的にメールにて配信されております。

2015年2月10日火曜日

【越境するサル】№135 「丸谷才一『裏声で歌へ君が代』再読~「台湾体験」の記憶へ~」

去年3月末、妻と台湾旅行に出かけた(※注1)。11月、丸 谷才一の長編小説『裏声で歌へ君が代』(1982)を再読した。このふたつの出来事は、実は深いつながりを持っている。だが私は、この小説をかつて読んだ ことが、「台湾体験」のひとつだったことを、つい最近まで忘れていた。
 

      「丸谷才一『裏声で歌へ君が代』再読~「台湾体験」の記憶へ~」
   なぜ、台湾に行きたかったのか。何度か自問自答をくり返した末、私なりにいくつかの理由をあげ、この旅行を企てた意味を自分に納得させていた。結局は物見遊山の観光旅行だったわけだが、何かこの旅が必然的なものであったと思い込む必要が少しばかりあった。
   まず思い浮かんだのは、「台湾ニューシネマ(台湾ニューウエイブ)」の映画監督たちの作品群だ。ホウ・シャオシェン(侯孝賢)監督の『恋々風塵』(1987)や『悲情城市』、(1989)エドワード・ヤン(楊徳昌)の『クーリンチェ少年殺人事件』(1991)、これらの作品の舞台を肌で感じたい。台北や九ふん( ジォウフェン、なお「ふん」は人偏に「分」)の雰囲気を味わいたい。これがスタート地点だった。   映画といえば、酒井充子監督のドキュメンタリー作品との出会いも大きい。台湾の日本語世代の人々を取材した『台湾人生』(2009)と『台湾アイデンティ ティ』(2013)、ともに私が自主上映に携わった作品だが、この2本と出会ったことで「日本と台湾」の関わりについてより真剣に考えるようになったのは 確かだ。   これらの映像作品の背景を知るために、司馬遼太郎の『台湾紀行』(『街道をゆく 40 』)や田村志津枝の『悲情城市の人びと』などを読み、台湾現代史についての新書を読み、とりわけ「2.28事件」前後と「民主化」の過程について知識を深めようとしたのは、社会科教師・歴史教師として当然の帰結であった。   こうして私は、1945年に日本の植民地統治が終わり、国民党が台湾に到来し(彼らを外省人と呼ぶ)、この島の政治と社会のすべてのポストを握り、17世 紀以降大陸から渡ってきていた本省人と原住民の上に君臨してきたこと、1947年の本省人大虐殺事件(2.28事件)に代表される白色テロの時代があった こと、そして1980年代終わりに複数政党が認められ急速に民主化が進行したこと等々、台湾現代史の概略を学ぶことになる…
   旅行出発前、台北の街のイメージ作りのためにあわてて観た2本の映画もそれまでの「台湾体験」の流れに沿うものだった。   1本目はエドワード・ヤン監督の『ヤンヤン 夏の想い出』(2000)。呉念真演じる主人公(本省人であるらしい)が、外省人の大家族のなかで次々と起こる迷路のようなトラブルの連続に耐えながら息 子ヤンヤンとともに生きていく姿を、コメディタッチともいえるスタイルで描いた作品である。かつての宗主国である日本に対する、本省人の複雑な心理を読み 取ることができるこの作品については、いつかふれることになるはずだ(※注2)が、私は民主化後の人々の日常をイメージするためにこの映画を観た。   もう1本は、酒井充子監督の『空を拓く』(2013)。台湾出身で、日本の霞ヶ関などの高層建築を設計した郭茂文の人生を描いたドキュメンタリーであるこ の作品で、同じく彼の設計による台北信義副都心の高層ビルや台北各所にある彼が設計したビルについて事前学習を済ませ、まだ見ぬ台北の街をイメージした。   そして私は、とにかく台湾へ、台北へ、出発したのだ。
   …台北から帰って、半年以上も経過したある日、弘前図書館の雑誌コーナーで月刊文芸誌『新潮』のバックナンバーを何冊か手に取りぺーじをめくっていた私 は、垂水千恵の論考「丸谷才一の顔を避けてー『裏声で歌へ君が代』試論」(2014年11月号)と出会った。突然、ある記憶が蘇った。日本を舞台とする、 「台湾民主共和国準備政府」の物語。作者は丸谷才一。その題名は、私も自分の通信の題名にもじって使用したことのある(※注3)『裏声で歌へ君が代』。な ぜ、この小説のことを忘れていたのだろう。いや題名ははっきりと記憶していた。その内容をなぜ、ずっと忘れていたのか。「台湾体験」のひとつだったはずな のに…
   「丸谷才一の顔を避けてー『裏声で歌へ君が代』試論」で、垂水千恵は次のように論じている。   2012年10月、87年の生涯を閉じた丸谷才一について、新聞や文芸詩は追悼特集を組むなど一斉に高い評価を与えているが、「口々に褒めそやされる丸谷 評価の中で、ほとんど言及されなかった作品がある。一九八二年に新潮社から刊行された、「台湾民主共和国準備政府」「第三代大統領」「洪圭樹」を重要な登 場人物とする長編小説『裏声で歌へ君が代』である。」同書は、発売直後から書評で高く評価された作品だが、発売直後とその後の若干の言及を除けば「これま でほとんど正面から論じられることがなかった。」「また、その台湾独立運動に関する資料調査の広範さ、および台湾の将来に対する予見性には驚嘆すべきもの があるにもかかわらず、痛烈な『裏声で歌へ君が代』批判を書いた江藤淳はもとより、「ベタぼめ」した当時の論者たちから、最近刊行された『丸谷才一全集』 第四巻・解説に至るまで、誰もその点を論じて来なかった。」「少なくとも『裏声で歌へ君が代』に関する限り、丸谷は真の評者を持たずに逝ってしまったので ある。」「もっとも」と筆者は言う。「これまで台湾文学関係 でも『裏声で歌へ君が代』論は書かれてこなかった。筆者自身、発売直後に読んだ時には台湾研究を始めておらず、その後ぼんやりと意識しつつも、再読して来 なかった。無意識的に丸谷の顔を避けて来たのかも知れない。本稿はそうした自戒を込めて執筆した、もうすぐ三回忌を迎える丸谷に捧げる、台湾文学研究者に よる遅すぎた『裏声で歌へ君が代』論である。」
   もちろん筆者はこの後詳細に論を進めていくのだが、ここまで読んで、私はすぐさま『裏声で歌へ君が代』(以下『裏声で…』)の再読の準備に入った。まず、なぜか私の書斎の机に積み上げられた書籍の一番上に置かれていた丸谷の前作『たっ た一人の反乱』(1972)を読み始め、3日かけて読了。その4日後、自宅で見つけることができなかったため弘前図書館から借りてきた『裏声で…』の再読 開始。やはり3日で読了。ほぼ10日間、丸谷才一に没頭した。おそらく発売当時ちゃんと読んでいなかった『たった一人の反乱』をしっかりと読了したことも 含めて、充実した再読の時間を堪能した。この「再読」が必要だったのだ…
   『裏声で…』のストーリーは次のようなものである。   主人公は画商の梨田雄吉。少年の頃ナポレオンに憧れ、陸軍幼年学校に入ったが日本軍隊の精神主義に失望し、旧制高等学校文科に進み昭和20年入営、一兵卒 となり敗戦を迎える。戦後大学を出て銀行に就職するが、その後ガウディの建築写真に心を動かされて銀行を辞めてスペインに渡り、結果として画商となる。か なり無鉄砲な人生である。   この梨田と、偶然知り合った若く美しい未亡人朝子との情事を縦糸とし、梨田の友人である「台湾民主共和国準備政府」第三代大統領洪桂樹(日本でスーパーマーケットを経営)と梨田の交友を横糸として、物語は進行する。   前半の大きな山場は、梨田が知り合ったばかりの朝子を誘って赴いた洪桂樹の大統領就任パーティである。初めて「準備政府」の存在を知った朝子は梨田に「無 い国の大統領ですね」と尋ね、梨田は「心のなかには熱烈に在る」国である、と説明する。この日から梨田と朝子の関係は始まり、洪と梨田との交友も新たな段 階を迎えていく。   やがて、「蒋介石、今はその息子蒋経国」の政府が「日本の敗戦後、中国からはゐつて来て、台湾を支配してゐるのに反対して、台湾独立を企ててゐる」洪の運 動は、「国府軍退役中将」伊朱正の洪への接近(この仲介を梨田がやってしまうのだが)により雲行きが怪しくなり、ある日突然妻にも告げず、洪は帰台する…
   垂水千恵「試論」は、この小説の「台湾民主共和国準備政府」が1956年に東京で樹立された実在の「台湾共和国臨時政府」をモデルとしたものであり、同じ く小説の中で国民党の工作により帰台した「洪桂樹」は、1965年国府に投降・帰台した実在の人物「台湾共和国臨時政府初代大統領・廖文毅」がモデルであ ることを示す。そして、丸谷がこの小説の「後記」にあえて「これは虚構の物語である。登場人物たちはすべて実在の人物と関係がない。」と断りを入れたの は、モデル論議を予想してのものだとする。しかし、多くの論者は「台湾民主共和国」が全く架空の存在であると思い込み、「台湾共和国臨時政府」の実在を無 視してそれぞれが論じていることを指摘する。   こうして垂水は、丸谷が多くの参考文献を読み込んで、実在した「台湾共和国」を裏声の中でどのように再現していったか、また、1982年の刊行時点では読むことが不可能な現実のエピソードまで、小説の細部に生かされている事実に言及する。
   実は、私も『裏声で…』と初めて出会った際、全く架空の、というより寓話のような(あるいは神話のような)物語として読んだという記憶がある。   そもそも読むきっかけは、蓮實重彦の『小説から遠く離れて』(1989)の中でいくつかの作品(中上健次『枯木灘』・井上ひさし『吉里吉里人』・大江健三 郎『同時代ゲーム』・村上春樹『羊をめぐる冒険』・村上龍『コインロッカー・ベイビーズ』等々)とともに分析対象となっていたことだった。私もまた、物語 の構成そのものについて考えながら、そのほかの小説とともに読んだ。だから、現実の台湾現代詩と交錯させて読んでいくという発想そのものがなかった。   今回、「試論」と出会い、『裏声で…』に台湾現代史が色濃く反映されていることを知ったうえで『裏声で…』を再読してみると、そのストーリー展開も人物設 定も全く違った物語に思えてくる。むろん、台湾現代史と独立運動は物語の枠組みにすぎないという考え方もできるのだが、『裏声で…』全体に「市民革命」へ の渇望、さらに「市民」とは何か、「国家」とは何か、というテーマについて突きつめて考えたいいう意志が感じられる。そしてそれは、現実の台湾独立運動を ふまえてのものなのだ(『裏声で…』刊行時点で、まだ「民主化」はなされていない)。
   いま私は、台北の中正紀念堂でオプショナルツアー現地ガイドと交わした会話の記憶を反芻している。   中正紀念堂は、1975年に死去した中華民国総統蒋介石顕彰の施設で1980年に完成した。「蒋介石陵」とでも呼びたくなるような建物で、大陸の方向を凝 視した巨大な蒋介石像と警護する儀仗隊の交代式が観光客のお目当てである。大陸からやって来た大勢の中国人たちがはしゃぎながら記念写真を撮る姿を見や り、私は現地ガイド(それは若く聡明な女性だったのだが)に「不思議な光景ですね」と問いかけた。「そうですね」と答えた彼女は、しばらく歴代総統の名前 を私と確認した後、次のように言葉をつないだ。「台湾の人たちが一番好きなのは蒋経国さんなんですよ。」「それは民主化のきっかけを作ったからですか」と 私は尋ね、彼女は小さく頷いた。「あなたは本省人か、外省人か」という問いはあえてしなかった…
   1987年、蒋経国によって、38年間にわたり施行されていた台湾及び澎湖地区の戒厳令が正式に解除され、30年以上にわたって続いた政党結成とメディア への規制が撤廃された。翌1988年、蒋経国死去。憲法の規定に従って副総統であった李登輝(本省人)が総統職に就く。民主化の波が台湾に訪れる。丸谷の 『裏声で…』は、この過程をある意味予見していたと言うことができる。
   2014年3月、学生たちによる立法院(国会)占拠行動(「太陽花(ひまわり)学運)」)。ちょうど台北に滞在していた私は、マイクロバスの車窓から、あ るいはツアー集合地点のホテル前から、そして24時間中継が続くテレビの画面を通じて、激しく熱く、しかし成熟した「市民」の可能性を感じさせる「闘い」 を目撃した。そして11月、統一地方選における「国民党の歴史的大敗」…
   ひるがえって、この日本で、私たちは「成熟した市民」となっているか。自問自答すべきだと言う声が、どこからか聞こえてくる。丸谷が『たった一人の反乱』 と『裏声で歌へ君が代』で、ときには逆説的に造形してみせた「市民」のさまざまな姿。この作業が、にわかに切実なもののように感じられる。『裏声で…』再 読の後では。

(※注1)   『越境するサル』№127「旅のスケッチ~台北の想い出」。写真付きのブログは、次をクリックせよ。   http://npoharappa.blogspot.jp/2014/05/no12720140501.html
(※注2)   エッセイ「台湾人の三人の『父親』」(『新潮』2014年3月号)の中で四方田犬彦は「現代台湾を代表する映画監督と小説家が、自伝的作品のなかでいかに 自分の父親を描いてきたかを比較」することを試みている。映画監督は呉念真と王童、小説家は陳映真。この3人の父親像を分析することで四方田は、「日本と 呼ばれる虚偽の父親が消滅し、蒋介石率いる国民党が新たな父親として君臨するにいたった台湾で、知識人と芸術家はいかなる父親の像を内面に定立しなければ ならなかったのか」を考えようとする。   この中で言及されている呉念真監督の『多桑(トーサン)』(1994)、王童監督の『バナナ・パラダイス』(1989)・『無言の丘』(1992)・『赤 い柿』(1995)などの映画作品や陳映真の小説と、私はまだ出会っていない。これらと出会った後、呉念真が主演した『ヤンヤン 夏の想い出』とともに、私も言及したいと思う。
(※注3)   『越境するサル』№17「裏声で歌え、インターナショナル」。   「社会派」映画監督ケン・ローチの作品を紹介したこの通信は、題名を「借用」しただけで『裏声で歌へ君が代』とは何の関係もない。ただ私の記憶の底に、 「裏声で歌え(歌へ)」というフレーズが刷り込まれていただけだ。しかし、なぜ丸谷が「君が代」を題名の中に入れたかについて深く考えていくと、話は少し 複雑になる…また、宿題が増えた。
 
<後記>
   たった1冊再読しただけで、書きたい(話したい)ことがこんなにもあふれてくる。実は、まだまだこの件で書きたいことがあるのだが、別な機会にする。というより、これから何度も何度も台湾について語ることがあるだろう。   なお、今回も紹介したドキュメンタリー映画作家酒井充子監督が、3月、新作とともに弘前を訪れる。彼女の作品も含めた「harappa映画館」上映作品4本の紹介は次号で。酒井監督、読んでますか?


(harappaメンバーズ=成田清文)

※『越境するサル』はharappaメンバーズ成田清文さんが発行しており、個人通信として定期的にメールにて配信されております。