1月末から3日間、函館に滞在した。将棋部の全国新人大会の引率だが、日程に余裕があったので、気になっていた喫茶店を1日に1軒ずつ訪れることができた。時間つぶし程度の訪問で「珈琲放浪」と言えるほどのものではないが、貴重な出会いはあった。
「珈琲放浪記~函館 湯の川から宮前町、そしていつもの十字街へ~」
1日目、まず函館駅前どんぶり横丁「恵比寿食堂」で、生徒と一緒に「函館黒豚丼」を堪能する。函館男爵豚を使用した、わりと新しい名物だ。
その後、市電で宿泊地の湯の川温泉へ。受付までかなり時間があったので、途中、宮前町の「横山珈琲店」で時間を調整しようと五稜郭公園前で降車。しばらく歩いて店の前までたどり着いたが、何と定休日。木曜も定休日とは知らずショックを受けたが、逆に闘志もわいてくるのが「珈琲放浪」の不思議なところだ…
それでもこの日、湯の川で「隠れ家」のような喫茶店に出会うことができた。湯の川温泉発祥の地にある湯倉神社の裏に、ひっそりとたたずむ「銀の匙」。骨董や手作りの小物が店内にも玄関や庭にもあふれ、何やら落ち着く雰囲気だ。コーヒーを凍らせた氷がたっぷり入ったアイスコーヒー(もちろんコーヒーの量もたっぷりだ)で一息つき、チェックインにはまだ早いが、少し得をした気分でホテルに向かう。
2日目、朝食の後、宿泊している「花びしホテル」のラウンジで北海道限定「N43ブレンドコーヒー」を頼もうと思ったが、現在は扱っていないとのこと。これも昨日の「横山珈琲店」同様、かなり詳しく情報を調べていたのだが不発。インターネットの情報は必ず直接確認すべし、と頭ではわかっていたつもりだったが残念至極。しかし、気を取り直してエスプレッソを注文する。これが思いの外美味い。とりあえず満足して大会に突入。夕刻まで珈琲はお預け…
夕方近く、公式戦終了。湯の川からバスで「横山珈琲店」を目指す。五稜郭駅経由昭和営業所行き。万世橋を越えた所で下車。住宅街の中に、昨日確かめておいた三角屋根を発見。やっとたどり着いた。全体に暗いトーンの店内はかなり広い。10人ほどが座れる長いカウンター席に座り、「深煎り30グラム180cc」を注文する。ここでは、このように珈琲豆と水の分量を客が選ぶ。ちなみに、「深煎り」のもう一種類は「30グラム150cc」である。
一口飲んですぐ、ああ、これが私の求めていた苦さだ、と思った。すっきりとしていて、しかも深い味わい…自分のボキャブラリーの貧しさが何とも情けなくなるが、そのような表現しかできない。配合について質問する必要もなし、ただその店のブレンドに任せればいい…そんな店に時々出会うが「横山珈琲店」もそのひとつだと思った。もう一度来る。その時は「深煎り30グラム150cc」にチャレンジしよう。
3日目は、函館駅出発までの時間を利用して十字街へ。行き慣れた「函館市地域交流まちづくりセンター」(末広町)1階喫茶「Drip Drop」に立ち寄る。「フレンチブレンド」(深煎り)を注文し、おそらくこれから函館の珈琲の基準(むろん私の好みの基準だが)となるはずの味を確認する。相変わらずの喉ごし、期待通りだ。本当は、ちょうどこの日在庫がなかった「マンデリン」を飲みたかったのだが、めげずに次の機会に期待する…この楽天性が「珈琲放浪」の真骨頂。
函館編は、このあとも2年に1回ほど発信されるはずだ。その際、同じ店が再登場することもありそうである。今回の「Drip Drop」も2度目の登場である。
<後記>
珈琲を飲むために要する時間は30分。その30分間を、今回も持つことができた。
往復の車中で、大江健三郎『晩年様式集(イン・レイト・スタイル)』を読み終えた。『サル』に結実するのは、いつの日になるだろうか…
(harappaメンバーズ=成田清文)
※『越境するサル』はharappaメンバーズ成田清文さんが発行しており、個人通信として定期的にメールにて配信されております。
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