東日本大震災から7年。少しずつ復興は進んでいるが、原発事故については収束とはほど遠い状況が続く。そして、「3.11」の記憶は確実に風化しつつある…harappa映画館は、これまで「3.11」をめぐる映画を上映してきたが、今年も3本のドキュメンタリー映画を上映する。記憶の風化に抵抗するために。上映の日は、3月11日。
「3.11 私たちは、忘れない。~上映会への誘い~」
「第27回harappa映画館」で上映される作品は、『祭の馬』(2013 松林要樹監督)・『被ばく牛と生きる』(2017 松原保監督)・『息の跡』(2016 小森はるか監督)の3本。「3.11」以降作られた多くのドキュメンタリーの中でも、珠玉と言える3本である。被写体と真摯に向き合い、寄り添うように制作された作品ばかりだ。
『祭の馬』は、『花と兵隊』(2008)・『相馬看花 第一部
奪われた土地の記憶』(2012)の映画作家・松林要樹が『相馬看花』第二部として発表した作品。2007年、青森の牧場で生まれ、2010年、中山競馬場でデビューを果たした黒鹿毛の牡馬ミラーズクエストは、1勝もできずに地方競走馬登録を抹消された。引退し福島県南相馬市で余生を送ることになったミラーズクエストを、「3.11」が襲う…激しい津波の濁流から生還し、福島第一原発の事故による飢えと渇きの中で生き延びた彼。震災直後の福島県相馬から、冬から春の北海道日高、そして相馬野馬追の夏へ。彼の運命を通して、私たち人間の運命を映し出す、まぎれもない傑作。主人公のキャラクターがドキュメンタリーの生命線のひとつであるならば、ミラーズクエストはまさに「キャラが立つ」馬だ…
『被ばく牛と生きる』は、「山形国際ドキュメンタリー映画祭2017」の特集「ともにある」で上映された(インターナショナル版)。2011年、東日本大震災と福島第一原発事故から2カ月後、国は原発から20キロ圏内の警戒区域内にいるすべての家畜を殺処分する指示を出す。多くの畜産農家が殺処分に応じることに追い込まれる中、十数軒の畜産農家が被ばく牛を生かそうと決意した。膨大な餌代を自己負担と支援によってまかないながら、経済的価値のない牛を生かし続ける人々。被ばく牛を生かす唯一の道は「大型動物による世界初の低線量被曝研究」に役立てることだが、国はこの研究から手を引いていく…この作品が長編初監督となる松原保監督が、彼らの5年間を追う労作。ナレーションは竹下景子。
『息の跡』は、「山形国際ドキュメンタリー映画祭2015」の特集「ともにある」で上映された(112分版、今回上映する劇場版は93分)。岩手県陸前高田市、津波で自宅兼店舗を流された佐藤貞一さんが、その跡地に建て営業を再開したプレハブの種苗店「佐藤たね屋」。手描きの看板、手掘りの井戸、すべて自力で作り上げた店で復興を目指す佐藤さんは、震災の体験を独習した英語で綴り自費出版。中国語やスペイン語での出版にも意欲を示す…「世界の果ての小さなたね屋」の寓話のような神話のようなドキュメンタリー。『波のした、土のうえ』(2014)を協同制作した2人組アートユニット“小森はるか+瀬尾夏美”の若き映像作家・小森はるかの劇場長編デビュー作。
ゲストは、せんだいメディアテーク学芸員小川直人氏。小川氏は、「山形国際ドキュメンタリー映画祭2011」からスタートした、大震災と原発事故に向き合う人々を捉えた映像作品を集めた東日本大震災復興支援上映プロジェクト「ともにある Cinema with Us」コーディネーター。
『息の跡』上映後、氏を中心にシネマトークが行われる。これも、多くの観客にぜひ参加してほしい…
3月11日は、harappa映画館へ。
日程等は次の通り。
3月11日(日) 弘前中三8F・スペースアストロ
「3.11 私たちは、忘れない。」
10:30 『祭の馬』(74分)
13:00 『被ばく牛と生きる』(104分)
15:30 『息の跡』(93分)
※上映後、山形国際ドキュメンタリー映画祭
特集企画「ともにある」コーディネーター小川直人氏らによるシネマトーク
特集企画「ともにある」コーディネーター小川直人氏らによるシネマトーク
1回券 前売 1000円 当日 1200円
会員・学生 500円
3回券 2500円(前売りのみの取り扱い)
※1作品ごとに1枚チケットが必要です。
チケット取り扱い
弘前中三、紀伊國屋書店、まちなか情報センター、弘前大学生協、
コトリcafe(百石町展示館内)
詳細は、次をクリックせよ。
<後記>
3月のharappa映画館は、一昨年「函館発 佐藤泰志映画祭」、昨年「ドキュメンタリー最前線 2017―私たちは、人間と出会う」と、力の入った企画が続いたが、今年も力の入った企画「3.11
私たちは、忘れない。」をお届けする。残念ながら、当日私は事情のため不在だが、できるかぎり宣伝活動に励みたいと思う。なお今回の3本は、すべて『越境するサル』№166「今年出会ったドキュメンタリー2017 10-12月期」で紹介したもの。弘前の観客に観てほしいと、その時素直に感じた作品ばかりだ。
(harappaメンバーズ=成田清文)
※「越境するサル」はharappaメンバーズの成田清文さんが発行しており、
個人通信として定期的に配信されております。
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