2018年3月23日金曜日

【越境するサル】№.169「スペイン紀行(上)~マドリード、そしてトレド~」(2018.3.22発行)


今月、つまり20183月、妻とスペインを訪れた。添乗員付き12名のツアーだから、かなり気楽な旅のはずだったが、成田からマドリードまで14時間余りのフライトはさすがにきつかった…
 
 
「スペイン紀行(上)~マドリード、そしてトレド~」

  スペイン1日目。マドリードのホテルに到着したのが午後7時過ぎ。この日は夕食がないので、次の日の日程確認と荷物整理のあと、現地ガイドに紹介してもらったホテル向かいのバルへ早速繰り出した。市民と旅行者で賑わう店に入り、にわか勉強してきたスペイン語で何とか飲み物とタパスを注文する。白ワインとビール(セルベッサ)、イベリコ豚の生ハム(ハモン・イベリコ)とタコのガリシア風。最高の組み合わせを味わいつつ、スペインの旅は始まった…

 スペイン2日目。午前中はマドリード市内観光。一般入場前のプラド美術館特別見学からスタート。世界三大美術館の一つに数えられるプラドの諸作品を混雑なしで鑑賞できる、まさに「特別」な時間。ベラスケス、エル・グレコ、ゴヤの3人を中心に、スペイン王家の豪華なコレクションの数々を堪能する。



 私にとってとりわけ重要だったのは、「プラドでゴヤを鑑賞する」ことだった。かつて堀田善衛の著作『ゴヤ』(全4巻、1974-1978新潮社、1992朝日文芸文庫)を読み(雑誌『朝日ジャーナル』連載中から気になっていた作品だったが)、しばらく「ゴヤ」に浸りきっていたことがある。今回、ガイドに導かれ『着衣のマハ』・『裸のマハ』・『180853日の虐殺』を経て『我が子を喰らうサトゥルノ』ほかの「黒い絵」シリーズの展示室までたどり着いた時、既視感のようなものを感じたのはこの読書体験による。

 館内撮影禁止のため、ひたすら自らの記憶に諸作品を焼き付けた1時間15分。土産にベラスケス、エル・グレコ、ゴヤそれぞれのお気に入り作品のマグネットを買い求める…



 プラドからほど近い、ソフィア王妃芸術センターへと急ぐ。ヨーロッパ現代美術のコレクションを展示するこの美術館の存在も、私たちにスペイン行きを決意させた大きな要因のひとつだ。ここには、ピカソの『ゲルニカ』が展示されているのだ(写真の『ゲルニカ』はマグネット



 真っ先に『ゲルニカ』に向かう。縦約3.5m、横約7.8m。巨大な絵だ。誰もが知っている絵だが、間近で見るとやはり圧倒的な存在感だ。、内戦中の1937年、スペイン共和国政府はパリ万博スペインパビリオンに展示する絵の制作をピカソに依頼する。そしてピカソは、フランコ将軍と結んだドイツ空軍による、バスク地方ゲルニカへの空爆に対する怒りをモチーフとした絵を完成させた。

 スペイン中から、いや世界中から集まってきた人々とともに、『ゲルニカ』の前に立つ。


 ソフィア王妃芸術センターでは、ダリとミロも見逃せない。日本で開催された展覧会でも何度かその作品と遭遇したが、この美術館で出会うのはまた格別だ。しかも撮影可の展示もあり、駆け足で鑑賞・撮影を繰り返す…



 この日、スペインは「女性の日」。各地で、女性の権利を求めるデモ行進が行われた。ここソフィア王妃芸術センター前からスタートするグループに私たちも遭遇したが、その全貌を知るのは、夜のテレビ報道によってであった…



 デモ隊が少しずつ街の各所に集まっている時、私たち観光客は王宮やスペイン広場で写真撮影。かつての繁栄の名残りと、スペインの現在が、同じ時刻に交錯する…



 ランチはパエリア。腹ごしらえを終えたら、午後はトレド探訪。マイクロバスで4時間半の、現地ガイド付きオプショナルツアー…



 「スペインに1日しかいないならトレドへ行け」。マドリードから70km、エル・グレコが後半生を送ったトレドの町を訪れずして、スペインを語ることはできない。三方をタホ川に囲まれ、キリスト教・ユダヤ教・イスラームの3つの文化が融合した「16世紀で歩みを止めた町」。その旧市街に足を踏み入れる。


 石畳の路地を抜け、まず訪れたのはサント・トメ教会。ここで、エル・グレコの『オルガス伯爵の埋葬』を鑑賞しなければならない。去年の秋、NHKEテレ「旅するスペイン語」の中で紹介され、どうしても出会いたいと思い続けていた絵だ。



 教会に入るとすぐ、その絵に遭遇した。ひっきりなしに訪れる観光客の間をぬって、私たちもその前に立つ。かつてこの町の伯爵の死に際して起こったひとつの奇跡を描いた、エル・グレコの最高傑作。ひたすら凝視する…

 そして、トレドと言えば、スペイン・カトリックの総本山であるカテドラル。1226年から建設がすすめられ、1493年に完成した、ゴシック様式の大聖堂。道に迷っても、このカテドラルの大尖塔を目指して歩いていけば、そこにたどり着く。



 大聖堂内部に入ると、薄闇に浮かび上がる色とりどりのステンドグラス。円柱によって構成された角柱に支えられた、いくつもの礼拝堂。最初から最後まで、その荘厳さに圧倒される。



 さらに、コロンブスがアメリカ大陸から持ち帰った金が使われている宝物室の聖体顕示台、エル・グレコの『聖衣剥奪』…



 サント・トメ教会と、カテドラルと、銘菓マサパン、幾何学模様の工芸品、それに魅力的な石畳の路地。充実の午後だった、と言うべきだろう。マドリードのホテルに帰り着いたのは午後8時過ぎ、スペインでは普通の夕食開始時刻、だそうだ…
 

<後記>

  まず「スペイン紀行(上)~マドリード、そしてトレド~」を発信する。このあと、「スペイン紀行(中)~アンダルシア~」・「スペイン紀行(下)~バルセロナ~」を順次発信する予定だが、その前に「今年出会ったドキュメンタリー 20181-3月期」が入るはずだ。4月中旬まで、『越境するサル』のスケジュールは埋まっている。



(harappaメンバーズ=成田清文)
※「越境するサル」はharappaメンバーズの成田清文さんが発行しており、
個人通信として定期的に配信されております。

1 件のコメント:

  1. 素晴らしい紀行文です。臨場感に溢れ、簡潔にまとめられた文と写真で、その場の雰囲気が、伝わってきました。行きたい!ベラスケスのラス-メニーナス、大好きです。

    返信削除